第8話 二人の時間
「ところで
「来るって。美香からしつこく誘われて根負けしたみたい」
「一度、腹を割って話すいい機会じゃないか。久し振りだし」
「まあね。ミーティング後に一時間ほど時間を取ったわ。4人で話しましょう」
凛は高校生の頃の4人を一瞬思い出した。
「4人で顔を合わせるのっていつ以来かしら」
「さあね。少なくとも2、3年以上だね」
「碧とはしょっちゅう会っているけど、美香と樹は滅多に会わないものね」
「二人とも仕事で忙しいのさ」
凛は頷いて少し黙った。部屋の静かさが気になった。
「音楽でも流す?」
「プロジェクターも頼むよ。映像はまかせる」
凛はカクテルを持ってきて碧に渡した。
やがて20世紀のクラシックポップスが流れ、北海道の近代史や自然を紹介する3D動画が部屋中に広がった。
2人はソファーでくつろぎそれをしばし眺めた。
「碧、北海道新幹線って開業したの2030年だっけ? 長万部に駅ができたのがきっかけで、徐々に町が発展したんだよね」
「そう。でも人口はたいした増えなかったんだよ。人口が激減して消滅した町に比べればはるかにましだけど」
「移住してきた外国人にかなり助けられた側面があるね」
「ニセコ周辺の人口は増えたな」
「アリーナさん達とか、唯のお父さんのユージとか海外から移ってき来た人達とその子孫が活躍してきたよね」
「元々は観光がらみの移住が多かったけれど、その人達の協力もあって、インバウンドがより盛んになった。ウインタースポーツだけでなく、道内各地に旅行の目的地が広がった事も大きいよ。良い循環で人が増えた」
「最近どこか道内の旅行に行った?」
「三月頃に
「へー。流氷とか?」
「流氷の時期は終わっているし、そもそも温暖化のせいでもう北海道には接岸しないよ。海から知床半島の海岸線を見たり
「どうだった?」
「なかなか面白かったよ。滝や断崖、
「危なくないの?」
「うちの会社のフロート技術を使った船だから、全く問題無しさ。案内では、ちょうど百年前に大きな事故があったって言っていたけどね。その事故を教訓として安全第一で優れた観光資源になったらしいよ」
碧は凛が長い間、旅行に行っていない事を思い出した。
「凛は忙しいと思うけど、どこか行ってみたいところは無い?」
「そうねえ。秋ぐらいに少し休みが取れるから、紅葉のきれいなところに行ってみたいかな? 温泉とか」
「
「まあ、どこでもいいけど、せっかくなら少し遠出してみたいかな」
「少し考えておくか」
碧は一区切りつけて、カクテルを飲み干すと立ち上がった。
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