第3話 助けた姫にブチ切れる。

「助けてくださってありがとうございます! あぁ、なんて素敵なお方! 愛しております! 私の生涯の伴侶になってくださいまし!」


 魔物に捕まってた姫を助けたらクソみたいなプロポーズをされた。


「お前さぁ? 心から人を愛したことあんの?」


「え? だ、だから今、貴方様に」


「お前は俺の何を知ってんだよ! 今さっき初めて会ったばっかりだろうが! それで愛してるだ伴侶だ? ビッチかてめぇ!!」


「私の素直な気持ちですわ!」


「それがビッチって言ってんだよ! 出会い系でもやってんのかおめぇ? それで会った男にマジで惚れたりする奴だろ? 迷惑なんだよなぁそういう奴よぉ! 惚れたらすぐに言葉にすりゃあモテると思ってんだよなぁ! 飲み会でボディタッチする系のやつだろ? お前? 俺は優しいから言っとくぞ? 一緒に飲み会に来てる女は全員お前が居ない時にお前の悪口いってるかんな!」


「ひどい! 私は純粋に愛を」


「かーっ! 愛だってよ! 愛だか恋だか鮒だか知らねぇけどよ? そこまで言うんならそれを数値で表してくれよ!」


「人の気持ちは数字じゃありませんわ!」


「じゃあそんな不確定なものに一瞬で答えを出して愛してるとか言ってるお前はなんなんだこらぁ!!」


「ぐっ……」


「でよぉ? 確かお前が連れ去られてから二ヶ月立ってんだよなぁ? で、お前はフリフリのドレスを着たまんまだ? 風呂はどうしてたんだよ?」


「入れなかったわ……」


「くっさ! きったな! それ分かったら急にニオイが漂ってきたわ! なんだ? 姫なら臭くても汚くても助けられた時には抱きしめられて「マイハニー」とか言われる妄想してたのか?」


「してないし」


「人に求婚する前にお前はいますぐ風呂に入れ! 心の汚れは取れねぇだろうけどな!!」


「あんたもぉ帰りなさいよ! 他の人が助けに来るの待つから!」


「あれれ? 俺のこと愛してて伴侶にするってのはもう撤回ですか? お早い気がわりでよござんすね! 彼氏と別れて「悲しい」とか書いておきながら一週間後には新しい彼氏とインスタやってる系女子かよ! かーーーっ! きめぇ!!」


「もうやだこの人!!」


 俺はその後、嫌がる姫を抱きかかえて城まで運びそれなりの報奨金を受け取った。

 姫は俺の去り際に中指を立てていたが、あれは現実世界でもファンタジー世界でも同じなのな。

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