第四十五話 映画音楽 第一部 完

 マイルスは映画に音楽を付ける仕事に取り掛かった。いわゆる音楽監督でスコアミュージックだ。

 大手の映画会社の音響スタジオは普通のレコーディングスタジオの規模を遥かに超える。基本的に映画のスクリーンがある以上そのスタジオの大きさは推し量れる。いわゆる映画館の大きさだ。

 マイルスのスタジオではそうはいかないにしても、2台のコンピューターと8台のモニターがある。1台は音楽用でもう1台は映像用だ。

 映画音楽には楽曲、雰囲気を作る音楽、効果音などがあるが、効果音はあまり使わないことにした。その代わり曲をいっぱい作った。ミュージカルではないのに挿入曲は延べ47曲になった。ケンちゃんにも手伝ってもらってドラムを叩いてもらった。

 マイルスは脇元の死ではサンサーンスの「白鳥」をテナーサックスで吹いた。悲しい気持ちをブローして吹いた。ケンちゃんのドラムがカッコよかった。

テーマ曲も作って歌った。「Blue Sky」だ。

普段あまり吹かないクラリネットも吹いた。あの「ちいちゃん」のシーンだ。

 エンドロールではミュートを付けたトランペットでショパンの「Etude Op.10 No.3」を吹いた。ケンちゃんが叩いた。うう...たまらん!

日本では「別れの曲」で有名なあの曲だ。


 米山と奥さんのシーンも妬ける曲を書いて歌った。

「そして」

そして

指がからみあう くちびる重なる

二人の鼓動が 一つに聞こえる

目くるめくこの時の 時間が止まる

涙がこぼれそう 息が止まりそう

見つめ合う 目と目が

離れない 離せない

私たち運命の 扉が開く

抱きしめ合った 愛おしい

体が溶け合っていく

心が震えて 魂が揺さぶられて

やがて二人は 一つになる


そして…


 この曲はマイルスが、あの静のプロポーズに答えて、随分経ってから書いた曲だ。マイルスは静の事を今もそう思っている。



第一部 完

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