第9話

 突然ですが今わたしは、南さんと一緒にご立派な家の前にいます。


「本当にここであってますか?」

 とわたしが尋ねると


「何回か来たときあるけど、いつ見ても凄いな」


 南さんはひきつった笑顔を見せた。


 恐る恐るインターホンを鳴らすと、しばらくして扉が開き、陽葵さんがひょこっと姿を見せた。


「どうぞ中に入ってくださーい」

 と陽葵さんは明るい笑顔で迎え入れた。


 家に入って最初に抱いた感想は


「天井たかーい!!」


 と子どもらしさ全開の驚きだった。


 広々としたリビングルームに高い天井。大きな窓からは明るい陽光が差し込み、部屋全体は明るさに包まれていた。


「お茶持ってくるから、2人はソファーでくつろいでいて」


 言われるがままに、ソファーに腰を降ろす。物一つ一つが高級そうで緊張する。壊したりしたら弁償じゃあ済まなそう…


「そういえば、堂々とリビング貸しきって大丈夫なんですかね。ご両親とかは?」


「あー唯は知らないか。陽葵の両親は、海外で働いているから今はいないんだよ」


「そ、そうなんですね」


 こんな広い家に1人ってなんだか寂しいな。陽葵さんはどう思ってるんだろう?


「はいお茶ですよー」


 陽葵さんがお茶を持って戻ってくると、わたしは


「陽葵さん!今日はたくさん楽しいことしましょう!!」


 と明るい声をかけた。


「なんだかはりきってるね」


「2人とも!今日は、わたしが全力楽しませるから期待してください。2人が楽しめることなら、なんでもしますよ!!」


 そう高らかに宣言すると


「へーなんでもね」

 とニヤリと笑うと南さんと


「何しよっか琴梨ちゃん」

 と何か考えているような表情を見せる陽葵さん。


 すると陽葵さんは、何か思いついたかのような、表情で急に立ち上がり


「2人ともこっちの部屋にきて!!」


 とどこか嬉しそうに言った。


 わたしと南さんは、見つめ合って何が始まるんだろう?と思った。


 ルンルン気分の陽葵さんについていくと、ずらーっと服が並んでる部屋についた。


 部屋を見渡す限り、様々な色やデザインの服が部屋を埋め尽くしていた。

 ナース服やメイド服といったコスプレ用の服もあった。


「うわー!!たくさん服があるね」


「軽く服屋並みに揃ってるな」


 わたしたちは驚きの声を漏らす。


「でもこれ全部、陽葵とはサイズ違くないか?」


「よく気づいたね琴梨ちゃん。実は全部これ唯ちゃん用なんだよね」


「え?これが全部」


「そうそう、唯ちゃんが転校してきたときから集めてきたんだ。今日は着せ替えパーティーをするよ!!さぁ!!服を脱いで唯ちゃん!!!」


 いつも以上に興奮気味で、元気そうなところを見られて嬉しいという気持ちと、このあと自分がどうなってしまうか、という不安な気持ちに悩まされる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る