【即死チート】持ちの黒幕系親友に転生した俺、うっかりやりすぎてしまった結果主人公がストーリーから消えてしまった模様

にこん

第1話 即死チート


(異世界転生?)したようだ。


 異世界かどうかは怪しいけど俺が元々いた日本じゃないのは分かる。


 ここは普通の日本から少しズレた日本である。


 ここはモンスターが溢れていて、人々にはステータスやスキルを与えられた日本である。


 そういう知識が一気に流れ込んできた。


 で、この世界なんだけどとあるライトノベルの世界のようだ。


 タイトルは、長くて思い出せないけどようあるようなラノベである。


 主人公がモンスターを倒していくようなストーリーなんだけど。


 俺は主人公の親友として転生したようだ。


 母親が外国人で父親は日本人のハーフである。

 髪色は母親のものを受け継いだらしく、暗めの金色って感じ。


 名前は霧崎 乃亜。


 黒幕系の主人公の親友である。


 黒幕とは言っても悪役ってわけではないんだけど。


 世界の全てを知っているみたいな立場の人間である。


(時系列、だけど、うん。丁度ストーリーが始まる前、かな?)


 1月。


 ストーリーだが俺たちが【アイランド学園】と呼ばれる教育機関に入るところから始まる。

 高校のような場所でモンスターを倒す【探索者】と呼ばれる人間を育てるための機関である。


 ちなみにだが俺、霧崎 乃亜もその探索者というやつである。


 表向きは強くない探索者で通ってるけど理由がある。


 俺が黒幕系だからである。


 黒幕は真の力を悟られてはいけないのだ。

 黒幕はその力を隠して主人公を活躍させなくてはいけないのだ。


  そんな原作の設定を思い出していた時だった。

 コンコン。


 部屋がノックされた。


「乃亜?」


(この声は、幼なじみの柊か)


 柊 沙也加。


 俺の幼なじみである。

 そして同じ学園に通うとことになって、沙也加は原作主人公に恋をしてしまうのだが。


(その恋を応援していたのが俺、だったな)


 そんなことを思いながら扉を開けた。


 そこに沙也加が立っていた。


 15歳にしては大人びていると感じさせる女である。


「入学テスト、行こ」

「あぁ」


 よく見ると俺も沙也加も同じ制服を着ていた。

 同じ中学出身という証拠だった。


 俺は外に出る前にヘッドホンをとって首にぶら下げた。


(これでよし、トレードマークだもんな)


 学園の方に歩いていくことにした。


 ちなみにここは島である。人工島というやつだ。


 なぜそんなところに俺の家があるのか、と言われると俺が学園に入学するのは決まっているからだ。


 世の中では裏口入学なんだのと言われることがあるが俺には最悪その手段があるから、学園に入れることは決まっているのだった。


 だから入学する前から家がある。


 歩いてると学園前についた。


「たしか、実技なんかも測定されるんだったな」

「うん、そうだね」


 俺がそう答えたときだった。


「おぉっ?!かわい子ちゃんはっけーん!」


 声が聞こえた。


 後ろを振り返ると金髪の男がこっちに向かってきていた。


 そして沙也加に話しかける。


「ねね、君アイランド学園受けに来たの?」

「そ、そうだけど?なに?」


 金髪は顔を歪めた。


「この後遊びに行かね?何かの縁でしょ。ここで会ったのも」

「ヤダよ、行こ。乃亜」


 俺の手を取ってきた沙也加。


 そこで金髪はどなった。


「おい。俺の言うことは聞いた方がいいぞガキ。ヘナチョコ雑魚が。最弱の雑魚が」


 ピクリ。


 俺は背後を振り返った。


「お?バカにされて怒ったか?雑魚」

「そうだね、そのくさい口を塞がないと我慢ならなくなったよ」


 どちらかと言えば俺がバカにされたことがムカついた、というよりは霧崎 乃亜というキャラをバカにされたことについて俺は怒っている。


 なぜなら俺はこのキャラがそこそこ好きだったからだ。

 そんなキャラをバカにされて黙っていられるわけもない。


(黙らせるとなるとやはり実力でねじ伏せるのみ)


 戦闘準備をしよう。


 俺は首にかけてあったヘッドフォンを装着した。


 このヘッドフォンだが単なるアクセサリーではない。

 乃亜に使わせれば武器になる。


 俺は右手の人差し指を地面に向けた。


「先に言っといてやるよ土下座しろ雑魚」


 原作通り実力は隠していようかと悩んだが、やめることにしよう。


 実はと言うと原作でも乃亜が実力を隠す意味ってそこまでなかったしな。


「あぁん?てめぇ喧嘩売ってんのか?ヘッドフォン野郎」

「喧嘩売ってるかどうかも言わなきゃ分かんない?単細胞」


 そう言うと俺はポケットに手を入れて言ってやった。


「ハンデをくれてやる。俺はここから動かない。更にポケットから手も出さないでやろう」

「てめ……」


 ギリッ!


 歯を食いしばる金髪。


「ただし、貴様が動いた瞬間お前の探索者人生は絶たれると思え単細胞」


 こいつを最速で倒すための準備を始める。


音量増幅サウンドアンプ


 ドクッ!

 ドクッ!


 金髪の心臓の音が聞こえる。


 それから、ギン!ギン!と別の臓器の音が鳴る。


魔核コア】と呼ばれる魔法を扱うのに必須の臓器の音である。


 そして、俺の目的はこのコアの方だ。


 ここまでしてこいつのコアの位置を確定させた。


「舐めやがって!!!クソガキがぁあぁぁ!!!」


 ダッ!


 拳を振り上げた金髪。


【核殺し《コアブレイク》】


 俺は右手を開いてそのまま握りつぶした。


 バキャッ!


 金髪の中からなにかが壊れる音。


 そして、


「ごはっ!」


 金髪の動きが止まった。


 口から血が垂れ流れる。


「なにしやがった……てめぇ……」

「さぁ?安心しなよ。加減はした。普通は即死するところだが、今回に限っては死にはしないはずだよ。手加減してやったからさ」

「か、体が、動かねぇ……」


 バタリ。


 その場に倒れた金髪。


 とさっ。

 そのとき、男の胸ポケットから生徒手帳が出てきた。


 沙也加が聞いてきた。


「な、なにこれ。すごい、本当に倒しちゃった」


 俺はその声には答えずに生徒手帳を拾ってみた。



名前:西郷 強




(あっ。こいつ。たしか、原作にいた敵キャラじゃん。弱っ)


 ぶふぉっ。

 心の中で吹き出した。


 それから体育館の方に移動していくことにした。


 とまぁ、ここまでやって俺は思っていた。


(ほんとに強いなぁ、このキャラ)


 この世界で魔法を使える奴は全員【コア】を持っている。人間、モンスターを問わず持ってる。なんなら現在使われている武器にもコアが使われている。


 そして乃亜はそのコアの位置が分かれば、遠距離から破壊することができる。


 やり方は簡単、右手を開いて握り潰すだけだ。これだけで対象のコアを破壊して戦闘不能にすることが可能だ。


 他の奴らが敵の使う魔法に苦戦している中俺だけはすべてを無視して直接コアを破壊することが出来る。


 これが、霧崎 乃亜が原作で最強と呼ばれていた理由だった。


 他の誰もが絶対に出来ないことをやれる。

 これが乃亜の強みだった。


 ちなみにだが現在ダンジョンに探索者が潜る理由の大半が、このコアの採取である。


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