第7話

貴方が見ている景色は本当に正しいのでしょうか。


貴方はいつものように街を歩いている。真昼間だ。道の両脇はシートを広げた商人たちが思い思いの商品を売っている。人の行き交いが激しく、酷く賑やかで騒々しい。何もおかしなことなど無い。

気配もない。

視線もない。

でも、見えるのだ。

時々すれ違う人々のかける眼鏡に。

この世のものとは思えぬものが。

蠢く黒い泥が。踊る目玉の集合体が。佇む白い人型の何かが。臓物をぶちまけながら自然に歩く貴婦人が。

有り得ざる怪異がすれ違う度に垣間見える。

何も起きない。害はない。存在しない、はずだ。だが、分からない。

怪異に朝も夜も関係ない。どこであろうと何かが居る。自分を必ず見ている訳では無い。自分を必ず見ていない訳では無い。何も確かなことなどない。


本当に居ないのか。普段の自分に見えていないだけでは無いか。彼らには見えているのか。見えていてなんの反応も示さないのか。見えるのが普通なのか?奴らはなぜそこに在るのか?


もし、見えていることがバレたなら、奴らはどうするのだろうか。きっと、誰も知らないだろう。

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