恋人が浮気をしたので復讐のために彼女の姉と寝た。姉に劣等感を抱いている彼女はその日以降僕に異常な執着を抱くようになる。メンヘラ妹と余裕のある姉。ハッピーエンドでは終われない愛憎劇

ALC

第1話胸糞から始まる愛憎劇。僕に待っているのは…

「おい!福永!お前の彼女と寝たぞ!」

こんな人間を友人とは言わない。

だが残念なことに僕の友人はこんな奴ばかりだ。

「ほぉーん。証拠は?」

別にまだ信じ切っているわけではない。

いつもの悪ふざけの延長だと捉えていた。

「これ見ろよ!な?」

スマホの画面には僕の恋人である莉子りこと眼の前の友人が裸でベッドに潜っている写真が表示されていた。

「マジか…最後までやったの?」

「もちろんだろ。いい気味だぜ。学校一の美人と付き合っているとか自慢げに言っていたもんな。浮気された気分はどうだ?」

「最悪だが…そこまで悪い気分でもない」

「は?強がってんじゃねぇぞ?」

「まぁまぁ。お前が本当に好きだったのは莉子の姉だろ?」

「ん?あぁ…そうだが…」

「そっちには相手にされないから莉子に手を出したんだよな?お前の薄汚い考えはお見通しだぞ?」

「喧嘩売ってんのか?」

「先に売ってきたのはお前だろ?仕返しされて泣くんじゃねぇぞ?」

「上等だ!お前も莉子を奪われて泣くなよ?」

「あぁ。分かっている」

こんなやり取りも僕らの中では普通とまでは言わないがよくある話だった。

寝取られた経験は初めてだったが、僕以外の友人同士で寝取ったり寝取られたりの話は今まで何度も耳にしていた。

それがたまたま僕に標的が向いただけのことだった。

もしも寝たのが事実であれば。

あの様な終わっている性格の男についていった莉子を疑う。

もしも僕を嫉妬させるために写真だけ取ったとか、僕の泣きっ面が見たいからその様に見える写真を取らせてもらった。

などという話の場合もある。

だが僕の中では二人が結託したのだろうと結論付けると信じられない復讐心が目を覚ます。

友人は莉子の二つ上の姉である莉々に好意を寄せていたのだ。

僕はそれを思い出すと莉々にチャットを送った。

「今日って家にいる?」

恋人の姉ということで僕らは仲の良い関係性を築いていた。

「いるよ〜。講義サボったw」

「遊び行っても良い?」

「莉子も来るの?」

「いや、一人で行こうと思ってる」

「ふぅ〜ん。それって…そういうつもり?」

「想像に任せる」

「分かった。そのつもりで準備しておくね。もちろん莉子には内緒だよ?♡」

「当然」

そうして僕は早退をするとその足で莉々の一人暮らしのマンションまで向かうのであった。



莉子は姉の莉々に激しい劣等感を抱いている。

幼い頃から莉々は何事も器用にこなし、いつでも自由な振る舞いを許されていた。

対象的に莉子は毎日努力しないと一番を取ることが困難だった。

姉の努力している姿など見たことがない。

いつも余裕な振る舞いで一番を取っていく。

当然のように家族にチヤホヤされていた姉に劣等感を覚えたのは当たり前の流れだっただろう。

莉々も捻じ曲がった性格をしていると言っても過言ではない。

自分に恨めしい視線を送ってくる妹に快感のようなものを覚えていた。

しかしながら良い意味でその均衡が破れたのは僕という存在が大きかった。

莉子は初めて姉が持っていないものを手にした喜びで溢れていたと思う。

莉々は初めて妹に抜かされたと感じていただろう。

高校一年生の冬に付き合い出した僕らは莉々と三人で遊ぶ機会もあった。

その度に莉々に誘われるような態度を取られていたのだ。

けれど僕は恋人である莉子を裏切れなくて全て断り続けていた。

僕に対して異常な執着を持っていたのは莉々の方だったかもしれない。

しかしながらそれも本日で全てが裏返る可能性がある。

僕は莉々の一人暮らしのマンションに到着すると部屋へと向かった。



「凪くん。本当に良いんだね?」

「あぁ。どうやら莉子は僕を裏切ったらしい」

「そう。可哀想な凪くん。私が慰めてあげないと…♡」

そこから僕らはベッドでお互いを求め合うように行為を続けていく。

長い行為が何度も行われてお互いがお互いを激しく求め合った。

疲れ果てた僕らはベッドで眠りこけてしまう。

ピロンとどちらかのスマホに通知が届いて目を覚ます。

「莉子からだ。この状況見せつけてもいい?」

莉々は悪い笑みを浮かべて僕に問いかけてくる。

「構わないよ。先に裏切ったのは莉子だからね。これで復讐完了ってことにするよ」

「何言ってんの?凪くんは今日から私の恋人になるんだよ?」

「ん?そんな話だっけ?」

「莉子が良いって言うなら…どっちとも付き合ったら良いよ。最終的に私を選んだ時の莉子の表情を想像したら…♡」

そこまで言って莉々はゾクゾクっと体を震わせた。

下腹部辺りを押さえた莉々は震えが止まったのか莉子へとチャットを送っているようだった。

そこから数十分後。

マンションを訪れた莉子は唖然としている。

「何で…お姉ちゃんと寝てるの…?」

「お前が先に浮気したんだろ?」

「でも…そんなのって…無いよ…」

莉子は絶望したような表情を浮かべると逃げるように姉のマンションを後にする。

残された莉々はニンマリと悪い笑みを浮かべて恍惚な表情だった。

僕らはその後も数回身体を重ねてその日は莉々の家に泊まるのであった。



「おい。お前が大好きな莉々と寝たぞ。莉子に聞いてみると良い」

「は…?冗談だろ?自分の恋人の姉と寝たのか?」

「もちろん。同時に復讐するためにな」

「おいおい…まじかよ…」

友人は明らかに動揺しており膝から崩れ落ちる。

「こんなの…ただの合成写真だよ…それなのにお前は…マジで実行したのかよ…信じられなぇ…」

友人は泣き言の様なものを漏らすと本当に涙を流している。

「俺の好きな人をどっちも手にかけたとか…マジで…羨ましいなぁ…」

泣き崩れる友人に僕は少しだけ複雑な心境だった。

ということは…。

裏切ったのは僕だけということになる。

少しの焦燥感を覚えたが、もうこのままクズとして生きるしか無いのかと思考していた。

「凪〜♡一緒に帰ろっ♡」

実の姉と浮気をされたというのに莉子は今まで以上に僕に執着しているように思えた。

わざとらしく可愛い娘ぶった声音や仕草で僕に接している気がした。

「良いのか?僕は莉々と付き合うことになったぞ?」

「良いよ♡変わらず私の彼氏でもいてねっ♡?」

「………」

言葉が見つからずにただ頷くのであった。


ここから僕と莉子と莉々の三人の愛憎劇は始まろうとしていた。

もちろん僕に待っているのはハッピーエンドではない…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る