3.心配しかないのぉ…

いい運動になった。

腹も減ったゾ。

オヤツはまた貰い損ねた。コヤツワザとではないだろうな。確かにこのところ怠惰な事をしてた気はするが。


そして、今、コヤツに小脇に抱えられて風呂場に連れて来られ、洗われておる。

泡まみれじゃぁぁああああ〜。

コヤツの手はなんだ?!

ゴットハンドである。気持ちええのぉ〜。


仲良くさっぱりして、ワシワシ拭かれ、今マッサージを受けておる。

いい匂いのする毛並みがしっとりする油が薄っすら塗りたくられておるぞよ。


ほぉォン…天国ぞよ。


ピッ


籠に入れられる計りに乗せられておる?


「よし、飯だな。オレも、もうひと踏ん張り。次々作もネーム切っちまうか? ははは…」


台所に消えた。

ボサボサ頭がちょっと濡れて、しっとり押さえられておる。タオルで拭き拭きしておった。キチンとすれば、見栄えがいいであろうに…。


下僕2号は侮れん。


下僕……。


突然帰って来なかった。今までも時折りあったが、その前にはたっぷり撫くりまわされてだった。それもなかった。


非常事態だ。


遠吠えで呼んでみたが、現れず。

代わりに別の人間がやってきて、ペットホテルなるところに暫く厄介になった。


下僕と似た匂いの人間が迎えにきたが、すぐにこの下僕のところにやってきたのだった。

車の移動は辛かったのぉ……。




「先生、私で大丈夫だったですか?」


「なんで?」


「彼氏さんに睨まれません?」


「ああ、仕方ないだろ。空いてるのお前さんしか居ないし。オレは仕事しないとお前もヤバいだろ? 持ちつ持たれつ…ね?」


我は、後部座席にゲージの中。

我の身の周りの物たちでいっぱいじゃ。


運転席には男が二人。


助手席で脚を座席に上げてタブレットで何やらしておる。ボサっとしたのが『先生』というらしい。

運転をしてるのは、この『先生』とやらのおまけらしいの。何やら小さくなっておる。怯えた匂いがするの…。


「彼氏さんに…」


「大丈夫だって。仕事してる場所が同じになる事があるってだけで。別な事してるし、二人っきりになる事なんて日常でしょ」


「ですけど。今は、密室度が…」


「あっ、それいいね。次のに使うわ…」


「先生…。ちゃんと描いて下さいよ」


「大丈夫…かな?」


「なんで疑問形ぇ???」


「ちゃんと前見てねぇ〜」


そして、『先生』は下僕になった。




ピンポーン

訪問者を示す電子音が鳴る。


ドライドッグフードをしっかり食べておるところだったが、これは出迎えた方が良いのだろうか。


「お前は喰っとけ」

ソワソワしておったら、下僕に言い渡された。コトリと水が置かれた。


「誰だよ」

ボソボソ言いながら玄関に行った。


対応したのだろう。玄関が騒がしい。


「来るなって言っただろッ。お前が来ると気が散んだよ」


「先輩、ちゃんと食べてます? 掃除とかも出来てます? なんで来ちゃダメなんですよ。メッセージの返信もないし電話もほとんど出てくれないじゃない…」


「うっせぇ。帰れッ」


ピシャリと戸が閉まる音と戸を叩く音がする。

『先輩、先輩』と連呼しておる。

ガラスの嵌った引き戸は、叩くとうるさいの…。


食べ終わって、お座りしておったら戻ってきた下僕に抱っこされた。


寂しそうな顔をしておる。

ほっぺを舐めてやった。


スマホがブーブー振動しておる。

そう言えば、この男のスマホはよくブーブー鳴っておるが、コヤツはチラッと見るだけで、すぐにパソコンというヤツに向かったり、ソファでタブレットを触っておる。


で、よく寝ておる。


我の飯は用意してくれるが、コヤツは食っておるか?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る