【39】ドラゴン・パレード


 サメっちに乗って、外に飛び出すと、街の上空に――。


「あれ、何体いるの!?」

「10体以上いるねぇ~ 怖……」


 飛竜の大きさは、まちまちだったが、そのうちの一体……やばいくらいでかいのがいる。

 卵の大きさから考えて、あのでかいのが、母親かも。


 街が火事になった時、お世話になった噴水の石像、リヴァイアさんみたいに街中覆うような大きさでもないけれども、驚異的なデカさなのは確かだ。

 前世での架空のゴジラ? さすがにあれよりは小さそうだけど、もうこれは空飛ぶ一つ頭のキングキドラだよ!


  勢いよく飛び出して来たものの、これは流石に怖い。


 そして街にあった時計塔が見当たらない。

 本当に壊したな……。


 見ている間に、一頭がグン、と高い位置に舞い上がった。

 そしてある程度の高さまで上り詰めると急降下した。


 高めの建物を体当たりで壊す気だ!


 そうか、建物が邪魔だから、壊して更地にした後、降り立つつもりか。

 そして犯人を引きずりだすつもりなんだ。



 飛竜がすごい速さで街へ急降下してくる……!

 あんなに早いんだ!!


 建物が大量に壊れる! と思った時、


 飛竜の大きさに匹敵する闇のゲートが空中に現れ、飛竜はそれを避けることが叶わず、その中に飛び込み、消えた。

 恐らくどこか遠くに出口ゲートを開いて排出してるんだろう。


 また、他の飛竜が口を大きく開けて、街に向けて強風ブレスを吐いたが、また闇のゲートが開いて、遥か上空にそのブレスを逃す。


 ひええ……。


 ……アベル様と暗部がやったのかな?

 これをずっとやってるって事?

 急降下ならゲートを避けれないから、それをするのを待って魔力をどこかで練ってらっしゃるんだ。


 少しずつ、浜辺側へ飛竜達が移動してはいるものの、まだ時間はかかりそうだ。


「サメっち、アベル様がどこにいるかわかる?」

「わかるよ~ じゃあ旦那様のとこへいくね」



 *****



「アベル様!!」


 建物の影に潜んでいたアベル様を見つけて彼を呼ぶ。

 部下が誰も居ない。1人だ。


「リコ!? 駄目じゃないですか、地下洞窟から出てきては!!」


 真剣な目で怒られる。


「はい……! でも……っ」


 私はアベル様に後ろから軽く抱きついて、彼に魔力を流した。


 大量に流して戻りがない。

 これは手応え的にカツカツだったはずだ。


 あ、別にこんなに抱きつかなくてもできるんですけど、なんとなくやってしまいました。つい。


「リコ――」


 私に気をとられつつも、飛竜をテレポートさせるのを旦那様は忘れない。

 あの巨体をテレポートさせるなんて、魔力の使用量は半端ないはず。


「少し見に来たら、使用されてる魔力量が半端ないんですもの……魔石を補助で使っても、しれてるでしょう。使ってください。私の魔力」


「まったく、あなたは……。来てしまったものはしょうがないですね。でも、正直有り難い。魔力にもう余裕がありませんでした」


 旦那様は困ったように笑った後、懐中時計を出して見た。


「……冒険者達の匂いのついた服を持たせた囮役が、定めたポイントに到達する頃ですので移動します。あなたは戻って――……くれませんよね?」


「私……邪魔にならないようにしますから一緒に行きたいです……」


 私は、抱きついた腕に力を込めた。


 アベル様は困ったように笑って――私を連れてテレポートした。



******



 アベル様がおっしゃっていたポイントにテレポートで出ると、海の手前にある木陰だった。広い浜辺と、そこに置かれたあの大きな卵が見える。


 網袋を持った囮の部下が、テレポートを繰り返しながら走ってきて、私達のいるところまで到達する。


「旦那様、すぐに来ます!! ……あれ、奥様!?」


 私は知らないけど、向こうは私を知っているようだ。

 前世の飛行機に少し似たゴーっという音が聞こえる、飛竜の飛ぶ音だ。彼のいうとおり近い。



「魔力はまだあるか?」


 アベル様が部下に問われる。


「いえ、そろそろ無理です」


 部下の顔色は少し悪い、多分もうすぐで枯渇するんだろう。


 アベル様がそれを見て、空中に闇を作り出し、そこから魔石を一つ取り出した。

 それを部下に放り渡し、魔石から魔力を吸収するように言う。


 闇魔法のテレポート空間は、一時的に倉庫のような扱いもできたりする。

 あ、これは結構な数の魔石を用意されてる気がする。

 考えたら当然だけど。

 でも、わ、私のほうが魔石よりいっぱい魔力あげられるし。

 

「わかった、後は、私が請け負う」


 旦那様が、部下から網袋を受け取る。

 中は冒険者たちの服のようだ。


「ここから先は遮蔽物しゃへいぶつがないので、さすがに、連れていけません。ここにいてください、リコ。さて、卵を見つけて大人しく帰ってくれるといいんですが――」


 そう言うと、アベル様はテレポートし、遠くに見える卵の上に出たのが見えた。


「あ、アベル様……」


「奥様、大丈夫です――あ、どうやら飛竜が卵に気が付きましたね」


 飛竜が羽ばたく音と、大きな叫び声が聞こえた。

 卵を見つけた合図を仲間に送っているのだろうか。


 恐らく母親であろう大きな飛竜が浜の卵へ向かって急降下する。


 急降下してきた飛竜は砂浜を滑るように飛び、卵を咥えると、そのまま飛び上がった。

 アベル様は飛竜が卵を咥える瞬間に、冒険者の服の入った編み袋をその場に捨てて、テレポートして戻ってこられた。



「アベル様、卵を返せましたね!!」

「ええ、おかげさまで。……さて、これで帰ってくれるといいんですが」


 私達は、飛竜の様子を見守った。


「……巣のある方角を冒険者達に確認したところ、ここからなら街の上空を飛ばずに帰れるはず――つまり、街のほうへ飛ぶようなら、騎士団との戦いになるでしょうね」


「か、帰ってくれますように……」


 ――しばらくすると、リーダー格の卵の母親が、


「ケェーーーーーーーーーッ!!」


 っと雄叫びあげ――


「……帰宅合図だと願いたい」

 アベル様がつぶやく。


 しかし、飛竜達は、何回か海の上を旋回すると、私達の方を――見た。

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