佐藤さんは妻藤さんになる。~16歳の新妻~

千華

第0話 旦那さん

「佐藤さん。じゃなくてえっと、妻藤さん・・・」


背後からかけられた声に、心海ここみは振り返った。


担任の女史だ。

名前は忘れた。


「何か?」


心海は淡泊に問うと、女史は名字変更や婚姻に伴う書類の山を渡してきた。

学生婚はやっぱり大変だな。


「心海さん」


女史が、書類の説明を粗方終えて、今度は名前で呼びかけてくる。

心海が顔をあげると、女史は心配そうな顔を浮かべている。


「心海さん。何かあったら、相談して下さいね」


心海は目をぱちくりとさせた。



入学時、学校関係者には非常に驚かれた。

あの佐藤グループの令嬢が、家から一番近いという理由で、ごく普通の公立高校を選択したという理由で。

入学式も、自前のカメラを持って参戦した父を除けば、まったく普通の制服に髪で参列した。

なぜ驚かれるのか、理由は分かるが、理解しようとは思わない。


が、大企業の令嬢がユルユルな警備の元ふらふら歩いていれば、教師陣が心配するのも無理ない。



「ご心配ありがとうございます。でも――

明日から旦那さんが迎えに来てくれるそうなので」

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