「心のコンパ」は夢の中で・・・

もみじ

プロローグ

1夜目 ようこそ「心のコンパ」へ・・・

まえがき

Dear Nちゃん&Aちゃん

大丈夫。「渡る世間に鬼はない」っていう言葉もあるくらい、最低でもうちは誰が学校に来れなくなったとえしても、誰一人責めないから。学校の行事に出られようが、出られなかろうが、絶対に忘れないから。独りぼっちだと思ったら、夢の中で「心のコンパ」に来てみてね。いつかそこで会えるといいね・・・ O.Kより


「はぁ・・・辛い。」

 毎日なぜか訳が分からないぐらい辛い。そもそもなんで平日って「らな」って書くけど山場ばっかりなんだろ・・・?こんなこと、リアルで言ってしまったら、「志村ケンちゃん、リア充になりたいの?んなもんなれるわけないじゃんwそれにね、あんたは繊細過ぎるんだってw」ってバカにされる。そうに違いない。あぁ、今日もまた家に帰って自分のベッドでゴロゴロとくだらないことばかり考える。せっかく学校から帰ってきたばっかなのに、刻一刻と時間が過ぎていく。

 ただご飯を食べて、宿題終わらせて、テレビ見て、ネット見て、風呂入って、ベッドにダイブするだけのナイトルーティーン。あぁ、こんな毎日を変えるような、何か刺激が欲しい・・・そして、あんな悩みを言えるぐらいの親友が欲しい・・・

                 ☾

 そうやってベッドに潜って眠りにつくと、夢でカラフルな蝶が目の前に。その蝶に気を取られているすきに、1枚の横長な封筒を持っている。少々驚きつつ、その封筒を慎重に開けると、

「おめでとうございます、アカネさん!あなたはめでたく、この『心のコンパ』の新規参加者として選ばれました!さぁ、ついてきて!」

 と書いてあった。

「えっ、何、そ、その、こ、心の、『心のコンパ』って?!」

 自分にそんなイベントの心当たりがない。その時、虹色の蝶は案内するかのようにどこかに行った。自分は無意識に蝶のいく方へと進んでいった。どんどん進んでいくと、光り輝く大きなドアがある。まるで開けろと言わんばかりの感じ。恐る恐るゆっくり、ドアを開ける。

 すると、ドアの見た目よりそんなにきつくないようなカウンター前にいる。その向こうには少し広めな個室が何部屋か。これじゃまるで病院の診療室だ・・・とりあえずカウンターにいる人に聞こう。

「すみませ~ん」

 するとカウンターに座っている人はこっちを向いて

「何か御用ですか?」

 と聞き返す。

「あの~こんな紙を渡されたのですが、これって、何ですか?」

 そうすると、カウンターの人は驚き、さらに

「もしかしてあなたは、新規のお方ですね!この招待状から見るに、あなたはアカネさんでよろしいですよね?」

 とテンション高く言う。それに自分の心臓が反応するかようにバクンとうごいて

「は、はい」

 と固まってしまいそうだった。

「お待ちしておりました、アカネさん!ほかの新規の方もお待ちですよ~では、5番のお部屋にどうぞ。」

 とカウンターの人は自分を5番室に案内してくれた。そこには自分と同じ年ぐらいの人たちが5人ぐらい丸くなって座っていた。この個室はクリーム色っぽい優しい色合いの壁に半円状に座れるソファー。少し大きめな円状の木製テーブル、そして、気が利いているのかこげ茶のひざ掛けまである。どの個室もスライド式で木製ドアになっているようだ。

「こんにちは~」

 と挨拶をする気さくな子。

「ちーす」

 と少しチャラそうな子。

「・・・」

 と無言な恥ずかしがりやな子。

「チャオ~」

 といかにもヨーロピアンな感じの子。

「こ、こんにちは・・・」

 と若干怖がっているような子。かなり、個性的な子が集められたな・・・

「それでは、引き続きコンパをお楽しみくださ~い!」

 と例の人はそそくさと自分の場所に戻った。

 あの人が行ってしまった後、ようやく自分はまだパジャマ姿だと気付き、恥ずかしがろうとしたが、みんなもどうやら同じような姿だったからひとまず安心。えぇっと、何を話そうかな・・・?と迷っていた時、さっきの気さくな子が

「全員揃ったらしいし、とりあえず自己紹介をしようか!うちはホラン!まぁ、うちは、山形県民とモンゴルのハーフだけど、あるアニメのキャラから関西弁がうつってしもうたんや。だからたまに関西弁が出てくることがあるから、勘弁してね!」

 と自己紹介をする。これは自分もしないといけないなと思い、

「えぇっと、自分はアカネって言います。ここへはある虹色の蝶に招待状を渡されて、連れてこられました。」

 まだ全部言っていないのに、5人が

「うちも!」

「俺も!」

「・・・」

「僕も!」

「わ、私も・・・」

 と一斉に言った。

「えっ?みんなもなの?!」

 と言うと、ほとんど、というかそのまま同じように連れてこられたらしい。

「まぁ、ともかくよろしく・・・」

 と自分の自己紹介を締めると、次はチャラそうな子が、

「俺、ケイ!好きなのは、お金と友情!よろしく~!」

 といかにもかっこつけるかのように自己紹介する。でもどうせ着ているのはパジャマなので格好つかないけど。次に無口な子は、

「・・・シンイチ。よろしく。」

 とそれだけだった。次にヨーロピアンっぽい子は

「ボナセーラ(こんばんは)!僕はテオっていうよ。最近イタリアから移住してきたばかりさ!よろしくね~」

 と言う。他の子から聞いたけど、違う言葉を使う人には翻訳されて聞こえているらしい。最後に若干怖がってた子は

「ナ、ナズナ、です。よ、よろしく・・・」

 とこれで全員の自己紹介が済んだ。

 するとホランが

「あ、そうだ、スタッフさんからこんなメモが残されてたんだ~」

 とみんなに見せた。それにはここでできることが記されているようだ。その内容を覗くと、

「『心のコンパ』とは、夢の中にてほかの人と心を通わすことのできるコンパです。もし、ここに行きたい場合には、夢の中でしか身に着けていない小さな鈴を鳴らしてください。元の夢に行きたい場合も同じように行ってください。また、何かわからないことがありましたら、我々スタッフにお声がけください。

 あと、『心のコンパ』をご利用にあたりまして、いくつか注意点がございます。

 1,相手の意見を否定しないこと

 2,初対面でも信頼されるようにやさしくあること

 3,現実で会おうとしないこと

 4,上記以外で相手に嫌なことをしない・させないこと

 これらを守っていただかないと、ペナルティとして悪夢の牢獄に落ちていただきます。くれぐれもお気を付けくださいませ。」

「こっわ・・・気を付けよ・・・」

 自分の第一声はそれで少々驚いた。

「うん、気を付けたほうがいいね・・・」

 とシンイチは言う。

 すると、どこからともなく時計の鐘の音がゴーンと聞こえた。何のことかと早速スタッフに聞いてみた。すると、この鐘の音は現実世界で言うところの「目覚まし」だという。ということは、もう朝か・・・ちょっと名残惜しいけど、またここで会えるよね。みんなに

「じゃぁね。」

 と一言言ってからドアを押して帰った。

                ☼

 ん、んん・・・もうこんな時間か・・・でも「心のコンパ」案外楽しいかも・・・よし、今日の夜にも行こうかな!


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