第10話 余韻
音楽会の撤収作業も済み、部活動の掛け声が校庭から聞こえてくる。
校内では吹奏楽部の練習音が頻りに響く。
「どうですか? 神音と一緒に、歌い手やりたくなりました?」
歌い終わって間もないにも拘わらず、神音は元気一杯に目を輝かせていた。
放課後となった教室には二人きり。
着席していた透華は神音を無視し、窓向こうの夕景色を見続ける。
教室に差し込む夕光が、ブロンドを輝かせた。
「…………行かなかったこと、謝るつもりないから」
「え、気にしててくれたんですね!」
「…………」
ふにゃふにゃと蕩けて笑う神音に目を合わせることなく、透華は眉をひそめた。が、すぐに大きな溜め息を吐き出す。
気だるげに肘を机に置き、片手で顔を支えて神音を射竦めた。
「機材は持ってるの」
「え?」
「歌い手として活動するための機材」
「それは……持ってないです」
ステージ上とは打って変わり、顔から蒸気を吹き出している神音。
透華は内心、呆れかえっていた。
あれだけの夢を語った割に、何の準備もしていなかった自分を知られて恥ずかしい気持ちで一杯なのだろう。……堂々としていればいいのに。
しかし神音の気持ちも経験的に理解できてしまうため、透華は決して指摘しない。
「週末、暇?」
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