不登校引きこもりJ K妹


 琴音が引きこもりと化した。立派な高校生であった琴音がだ。


 「ニート」と私を見下していた彼女がこういうふうに堕ちるのは以外でもあるし、私からしたら少し面白い。


 しかし、実空家を空気は明らかに良いとはいえなかった。


 琴音引きこもり三日目。

 彼女は宣言して以来、部屋に篭りっぱなしだ。

 現在、家族誰一人とも話せない状態である。

 なので私は母に琴音は何故あんなことになっているのか聞いてみたのだ。


「母さん。何で琴音あんな変なことになってるの?」


「それが、話してくれないのよ。これじゃ力になってあげようにも、何にもできないわ」


「一旦、学校に琴音の現状を連絡したり相談したりすれば?」


 私らしくもないまともな提案をした。それには母も賛同した。


 琴音引きこもり五日目

 琴音のこともあるが、〆切が正直言ってヤバかった。とりあえず、アニラジをつけながら作業をする。


『じゃあ次のメール行こうかー。えーと「ナマケモノ」さんからでーす。「私はフリーランスでイラストを描いているのですが、〆切に間に合いそうにありませーん。どうすればいいか教えてくださーい」とのことで』


 面白いこともあるものだ。まさか、私と同じ状況の人がいるとは。しかし、ここで、アニメの声優さんと私は同時にあることに気づく。


「「『ナマケモノ』って『ならずもの』先生のことじゃん」」


 アイツ何やってんの?


 このアニラジのアニメはラノベ発でイラストを描いていたのはもちろん『ならずもの』だ。


「ほんとにあの人は変な性格してるなー」


 と小説を書きながら私は呟いてしまった。


 ちなみにならずもの先生のもう一つの名前は『ナマケモノ』というのは意外に結構大衆に知れ渡っているようだ。コミケでもそうゆう名前で出してるし。


『しかも、わざわざ紙で……。可愛いイラストついてるので後でXで上げときますね』


 その後私はすぐにXに移動した。そのアニラジ公式アカウントには例のイラストが貼られていた。貼られていたのはものすごいラフな絵だった。


 琴音引きこもり七日目

 琴音が引きこもってから一週間が経った。

 まだ、琴音は出てこない。母は毎日琴音に声をかけてるが返事がないようだ。私はその様子を少し心配しながら見ていた。


 ピンポーン


「はい、はい」


 と母が玄関の扉を開けると意気揚々とした声が家中に響いた。


「よう、里美。遊びに来たぞ↑」


 その声は優の声だった。


「あら、優ちゃん!ほら上がって」


 と母は優を家に上げた。


「どうも失礼する」


 ぶれないねー。優。

 私は優にお茶を与えた。上げたはいいが私は仕事が溜まっているので、ノーパソを持って来て、優の前で仕事をした。


「お前……。なにやってんだ?」


「仕事だよ。仕事」


「へー(棒)」


 と棒読みで返事した割に優は私の仕事内容に興味があるようで、後ろからノーパソの画面を覗いてきた。


「なにこれ、小説?」


「うん」


「本でもあげるのか?」


「いえす」


「なかなかなものだ元ニートの我が友よ!」


 優はいきなり立ち上がって手をバサァと払った。


「いきなりキャラ出すなーお前」


 優はそのまま座布団に座り込み、鞄からノーパソを出した。


「かくいう私も小説を書いてるのだ。読んでみてくれ」


 と優はWordを開いてデータを私に見せた。


「こ……これは!」


 琴音引きこもり九日目

 ピンポーン


 朝から玄関のベルが鳴った。


「はいはい」


 私が出るとそこには夏美がいた。


「よ」


 私が夏美を部屋に上げると夏美はペンタブを取り出した。


「じゃん!見ろこれ」


 と私に見せてきたのは夏美がイラストを担当しているアニメ化大作ライトノベル『恋するだけで愛せない!』の新刊表紙だった。


「おー!可愛い!」


 と言いながら私はゴミ箱ボタンを押そうとする。

 すると夏美は強引に私の手を掴んだ。


「お前何やってんの?冗談でもやめてよ?」


 夏美の声は震えていた。


「いつかのお返しだよ」


 私がゴミ箱ボタンから興味を示さなくすると、夏美は一息ついた。


「ところで今日は何の用だ?これだけじゃないだろ?」


「まあ、今度の冬コミについてだけど……」


 と言いかけたところで夏美は何かを気にした様子を見せた。


「あれ、琴音ちゃんいる?」


 現在、絶賛ニートタイム。琴音がいるはずない。

 しかし、琴音はいるのだ。彼女はそれに気づいた。


「何でわかったの?」


「何か気配があったし、それに……」


「それに?」


 かなりの間が空く。そこまでの決定的な理由があるのか?


「靴。あったし」


「そぉうだぁねぇー」


 夏美は何か気になるのか琴音の部屋の前まで来た。


「おーい。琴音ちゅわーん。夏美おねーちゃんだよー」


「気持ち悪いよ。夏美」


 勿論、琴音からは返事がない。ふと時計を見てみるともう五時。こいつ結構いたな。


ピンポーン


「誰?母さん。なんか宅配頼んでた?」


「いや?」


 という返事が響いた。


「あれ?琴音じゃないの?」


 と夏美は聞いたが、私は首を横に振る。


「おーい!琴音!来たぞ!」


ガタッ!


 部屋から音がした。

 そんなこと気にせず私は


「な、なんだ。琴音の友達か」


 と言い、玄関の扉を開けようとすると……。


「開けるな!」


 と夏美が叫んだ。


「お、おい……。夏美……まさか、琴音ってやっぱり……」


 夏美は黙っている。しかし、彼女が何か言いたいかは私は分かっていた。


「おーい!いるんだろ?琴音―!」


 この声は心配しに来た琴音の友達の声では断じて違う。


 冷やかしのカスみたいな声だ。


 クラスメートからの冷やかしの声。

 私と夏美は琴音が何故不登校になったのか。完全に理解した。非常に単純なことであった。


「おい、琴音―!いないのかよ(笑)」


 琴音はいじめを受けている。


「絶対に開けちゃダメだ!里美!」


「で、でも、それじゃ何も変わらないじゃないか!」


「わざわざ冷やかしに来るようなカスどもだぞ!話し相手になんかならない」


 私は拳を強く握りしめた。


「何なんだよ……」


 こう会話しているうちも玄関の扉はドンドンと鳴り、彼らは叫び続けている。


 その状況に母はひたすら真顔で見ていた。


「何だよおい(笑)また来てやるからなー!」


 親がいるにも関わらずこんなことやる輩は恐らく賢くはない。どうにでもなる。が。


 現在の琴音の精神状態はどうなってるであろう。


「琴音―!琴音―!」


 私が必死で呼びかけるが応答なし。

 私は不安になった。扉の向こうで死と生を血迷ってるかもしれない。もしや、首を吊るしてるかもしれない。


 私の体は震えていた。


「琴音はしょうがないなー。おばさんすいません」


 母は「?」と頭上に出ているような顔をした。


「ちょっと、扉、壊します」


「「へ?」」


バキッ!!!


 夏美は琴音の部屋の扉を蹴飛ばし、いとも簡単に破壊した。


 私は思わず目を丸くした。

 しかし、すぐに正気に戻って、琴音の様子を確認する。

 そこにはちょこんと体育座りをしている琴音の姿があった。


「琴音……」


「…………」


 返事はない。しかし、私は駆け寄り、また話しかける。


「琴音。大丈夫?」


 というと琴音は私に抱きついた。


「ごめん……。お姉ちゃん。私……。何にも言えなくて……。心配かけて……」


 琴音は涙をこぼした。


「琴音。確かに私は相談なんかできない駄目な姉かもしれない。ずーっとニートだったし、家事なんかも琴音よりできないし、ヘタレだし、でも」


 私は琴音の頭を撫でながら言った。


「こうゆう時くらい、良いお姉ちゃんでいさせてよ」


「うっううっ」


 琴音は私の胸で泣きまくった。


「こらこら、そんなに胸にうずくまっても、うずくまる胸がないよー」


 琴音がめいいっぱい泣いた後、私、母、琴音、あと夏美とで、家族会議することになった。


「あの、実空さん……。これ、私いります?」


 と夏美が気まずそうに話した。


「いる。めっちゃいる。」


 と琴音がキッパリ言い張った。


「あっそう……。まぁいいけど。仕事溜まってないし」


 夏美は帰ることを諦めた。


「ところで、琴音、何があったの?」


 と私が問いただすと、琴音は黙々と話し始めた。

 




 女子高生 実空琴音である私は友達にも恵まれ、比較的陽よりの生活が送れていたと思う。

 成績もそれなりに取れてたし、運動もできる。不自由ない生活だった。しかし、ある日違和感を覚えた。


「おはよー!」


 私は教室に入るなり元気よく挨拶をした。しかし、いつも帰ってくるはずの返事が帰ってこない。


「あ……あれ?」


 何やら皆コソコソ話しながら、冷たい視線で私を見ている。気分悪いなぁ……。


 そう言えば、気になることがもう一つあるのだ。クラス1のギャル。霧方美樹きりかたみきがここ最近来てないことだ。


 その二件の問題に少し悩まされ、ストレスが溜まった。


 ストレスが溜まっていたので、お姉ちゃんをパシリに使って家で菓子を貪った。


 そして、問題は数日後に発生する。


「なぁ、霧方が来なくなったのって実空が何かやったからだろ?」


 皆がいる前でいきなりそんなことをほざいたのは

超陽キャでクラスの人気者。黒岩龍斗であった。


「え?そんなわけないじゃん……」


「いや、学校中で噂になってるから」


「逆にお前知らなかったのかよー!」


 教室内で笑い声が響き渡る。

 カツカツと黒岩は私に近づいて言った。


「お前、気づいていただろ?皆の目線……。そうゆうことだよ。この学校にお前の場所はないんだよ」


「かえれーかえれー」


 ざ……残酷だ……。学校って。


 私はその場からすぐ逃げ出した。自然に流れていく涙を拭き取ってる暇なんてないくらい。


 そして、私は家に帰って、部屋に逃げた。




「こんな感じかな」


 と長々しい話が終わった。聞いただけでも嫌な話である。


「それにしても、その霧方ってなんで休んでたんだ?発端はそこからだろ?」


 と夏美が呟いた。


ピンポーン


 玄関のベルが鳴った。


「よく鳴るなー」


 私はせかせかと玄関に向かった。


「はーい」


「どうも、実空さんいらっしゃいますか?」


 そこには金髪ロングヘアーの少女がいた。


「あの……こんなこというのもあれですけど……」


「?」


「私も実空なんですよね」


 足を踏まれた。


 ふざけている場合かと。


「実空……いえ、琴音さん!すみません!私のせいで貴方がこんな目にあって……」


 彼女の名前は霧方美樹。どうやら彼女は琴音に謝りにここに来たようだ。

 琴音は土下座した美樹に寄り添って。


 そっと、頭を撫でた。


 仲直りかな……?




 事件概要


 完全なる被害者は実空と霧方。霧方がやむを得ない理由で休んでいる間、黒岩たちが身もふたもないデマを学校中に広めたことで実空が疑いをかけられることに。黒岩たちは実空のことをよくは思っていなかったようでこのトラブルを起こすことにしたようだ。

 後に霧方がすべてを学校側に報告したことで黒岩たちには停学処分が下された。


「ところで、霧方さんは何で休んでたの?」


 と琴音が尋ねた。


「漫画の〆切が近くて少し休んでたの。みんなには内緒にしてたんだけど私、学生漫画家やってるから」


「へー!代表作何?」


 と何故か夏美が興味津々に聞いた。


「えーっと……『学園純正ロマンス』っていう恋愛漫画」


「「「がっ!!」」」


「ねえ、千里、何その漫画?」


 と母が聞いてきた。


「コアな層に人気を集めて昨年アニメ化した人気漫画だよ」


 なんで、私の周りって天才が多いんだろう。肩身が狭くなる。




 結果。琴音は学校には行かないようだ。学校に少しトラウマを覚えてしまったようでもう行きたくないようだから、「無理していくようなところではない」というわけで退学手続きを済ませた。

 琴音はこれから自分で出来ることを探していくようだ。


 私の方は〆切にはとりあえず間に合う目処が立って息をついていた。




チャット内会話


ケンタロウ『いやーそろそろですね。冬のコミックマーケット』


ふうりん『やる気マックスファイヤーで仕上げましたよ』


ナマケモノ『下に同じ』


ケンタロウ『今回はどうです?一般参加組は回収完了次第みんなでまわるというのは』


アルカリ電池『いいねーそうゆうことしたいって思ってた』


みどそん『お金貯めとかないとー』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る