第7話 女子会&お見合いでち


「八代、ハムスターに噛まれてアレルギー起こして会社休んでるよ!あははははッ」

鈴木を心配して鈴木と同期の女子社員、神田川ミサキが来たのは夕方だった。


神田川は、会社でも私生活でも裏表がないらしい。らしいと言うのは俺と鈴木がいる部所とは違い、俺はたまに会うくらい。


「いやー、でも佐々木先輩が亡くなって八代が動物アレルギーなんて、あの課長の位、呪われてんじゃないの?あははははは!」

豪放磊落な性格とは思っていたが、ここまでとは。


神田川は、八代が自宅近くで出勤前にしつけの悪い散歩中の犬に噛まれたとウソをつき、鈴木との関係は会社では、鈴木と八代と神田川の3人しか事情を知らないと話した。


ホッとしながら、俺は無意識に両腕で後ろから前へ、くしくしと毛づくろいをする。


「そしてそして、ジャーン!うちのハムスターの女の子を連れてきたのだ!ふふふっ。お見合いして子供でも産まれたらいいなあ~と思って!」

いやいやいや、見た目はハムスターだが俺はいまだに人間の女性しか興味がない。


焦っているうちに、ケージの横にドスンとピンク色の移動用のかごが置かれた。


「うちの可愛い、お姫様のエリザベスでーす♪サムくん、仲良くしてね♪」

そう言うと、神田川は背中を向けてコンビニで買ってきたビールとつまみの菓子をテーブルに広げだ。


おい、人間の見合いとは謂わないが雑だぞ神田川。


鋭い視線が横から突き刺さる。「可愛い赤ちゃん産まれたらいいなあ」なんて鈴木はのんきな事を言っている。


頼むから、いくらハムスターでも自由恋愛くらいさせてくれ。


恐る恐る横を見ると、ケージ越しに色白のハムスターがこちらを見ている。仕方なくケージごしにのぞくと俺は、現代の加工技術を名前にまでほどこしたのかという女の子のハムスターを見た。


「悪いけど、私はイケメンしか興味ないの」

どすの利いた声で、にらまれた。


いやいやいや、毛の色は白だが、相撲とりかと思うほどの俺より3倍はデカい体に、5段腹、手足は脂肪にうもれている。


どの口が「イケメンしか興味ないの」だ。そしてどのあたりが、エリザベスなんだ。


願い下げどころか、わいわいと始まった八代の悪口や会社の愚痴など女子会が始まっている。


「ガリガリじゃない、私は筋肉質のハムスターが好きなのに。本当にミサキは男を見る目がないわ」

そのデブは、否、お姫様とやらは、こちらに背を向け、どっこらしょと横になりだす。


イケメンだかタンメンだか筋肉痛だか筋肉質だか、かまわないが早く帰ってくれ。


本能なのか、俺はケージのすみにより恐怖でぷるぷると震えていた。





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