七つ片喰 長宗我部元親

@Radkaw66

第1話 土佐の姫

長宗我部国親は岡豊城で深刻なため息をついていた。


「まさか次男が姫と言われるとはな……。

今時代に困ったことだこりゃ。」


原因の元は長宗我部弥三郎である。

国親は三人の男児を得ていた。 


長宗我部弥三郎、吉良親貞、香宗我部親泰であるが、家督継承予定の弥三郎がどうにも女々しく、暗く、覇気がなく………。

全て国親の希望違いであった。

その弥三郎の家中でのあだ名がなんと

「姫若子」

だと言う。なんということであろう。 


「んで、そなたも言ってるんだ。姫若子と。」

「いえ…。全く…?」

半笑いで桑名太郎左衛門親光は答える。

「そんなこと…つい一刻前に初めて耳に入りましたぞ!ははは…。」

「………。」


現に笑い事ではなかった。


国親は長宗我部家を一条家の助けを借りようやく再興したばかりなのである。その長宗我部家であるが現在本山家と争っている最中であり、老年の国親はいつ逝くかわからぬのに家督継承予定者がこれである。初陣もまだで寝ても寝付けず、逝くにしても逝きたくなかった。


「んまぁ、とりあえず弥三郎をよんでこい。

この度の戦こそは戦場につまみ出すからな。」

「はっ。」


「姫若子どの~~~!」

「……。」


「お待たせ致しました。父上。……。

なにか?」

「なんでもないわい。」


やはり不安ではあった。

 




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