第11話 食べたいものが見つからない

疲れるのだろうか


いつも好きだと思ってるものが

今は食べられない。


でも、食欲はある。


それを朝の忙しい時に言うと

イライラされて、結局牛乳と白ごはんに

ふりかけで終わりになる。


食パンにバターでも良かった。


でもそんな気分でもない。


食べたいものが見つからない。

好きだったものが好きじゃなくなってる。


ひなたは、朝ごはんをままならないまま、

玄関のドアを開けて、今日も自転車に乗る。


風が冷たかった。


珍しくぱんだが、自転車の後ろに

ふわっと座った。

背中にぱんだの背中が当たる。

想像以上に軽かった。


ピロピロ笛の音が鳴った。


駅に向かう自転車。


(ひなたー、母さん、忙しいのに

 準備してくれたのにイライラしてたぞ。

 食欲ないのか?)


「あー、今日はなんかどれも味気ない。

 疲れてるんかな、俺。」


(コンビニでも寄って食べたらどうだ。

 何も食べないのはお昼まで持たないぞ。)


「確かに言えるな。」


 近所のコンビニに自転車をとめて、

 ひなたは物色する。


「心がビビッとくるもの食べないと

 美味しくないんだよな。」


(わかるけどな。その都度、

 違うんじゃ母さんも疲れるぞ)


ぱんだは他のお客さんには見えない。 

透明になってすり抜ける。

亡霊のようにひなたの後ろにぺったり。


ひなたは気にせず、独り言を言いながら、

パンコーナー、おにぎりコーナー、

ホットスナックコーナーをぐるぐると

回った。


「これなら行けそう!」


(しらたば…。確かにうまいけど。)


「買ってくる。」


ひなたは朝ご飯にしては量が少ない。

それでも食べたくなった。


(母さんもそればっかり

 買ってこれないしな。

 難しいんじゃないか。)


「いいよ、俺がこうやって、

 コンビニで買って解決っしょ。

 ほら、ぱんだ先生必要なーし。」


 えっへんとした格好をした。


 呆れて何も言えなくなるぱんだ。


「あ、やべ。

 学校、遅刻する。

 早く食べて、電車乗らないと!」


 ひなたはレジにしたらばを持っていく。


(今の時代の子は、贅沢なものだ。

 羨ましいな。)


 ぱんだはそう言って、消えた。


 ピロピロ笛はいつの間にか自転車のかごに

 入っていた。



「なんだよー、ぱんだ先生。

 今日は役に立ってないぞー。」

 

 そう叫びながら、サドルに座って、

 自転車の方向転換した。



 東の空に眩しいくらいの

 太陽が昇っていた。

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