第3話 朝どうしても起きられない

ひなたは朝が苦手だ。


ベッドの上、目覚まし時計が3個ある。


ふとんから手を伸ばし、

起きる時間に鳴った時計を5分おきに

止める。

さらにスヌーズ機能で鳴る時計を止める。


それでも、起きられず。

ふとんの中でいびきをかいて寝ている。


こんだけ目覚ましがあるのに、

結局、母にふとんをはがされて起こされる。


「ひなた!!」


「うわ!」


「起きなさい!!」


「はい、起きます。」


 慌てて、スマホを手に取り、

 ベッドから起きた。

 なんのための目覚まし時計かわからない。


 廊下にあのぱんだ先生が現れた。

 母は、気にせず、ぱんだをすり抜ける。

 見えていないようだ。


 相変わらず、何も話せないようで、

 口元にピロピロ笛を持っていく。


 ピーと高音が鳴った。


 また脳内に言葉が聞こえて来た。


(自分で起きられないか。)


「うわ、寝起きにぱんだの声は

 聴きたくないな。

 低い声だけど!!」


(起こしてもらえるなんて、贅沢だな!)


「いや、本当。

 自分で起きたいけどね。」


(今は、学生だから、

 お母さまでいいけども。

 一人暮らししたらどうするんだ?)


 ぱんだが話すたびにピーピーうるさい。


「それな。

 俺も思ってた。

 どうするよ、ぱんだ先生。」


(目覚まし時計を増やす。)


「いや、無理だろ。

 3つで起きないんだから。」


(通販で売ってるのを見つけたんだが。)


 ぱんだはピーピー言わせながら、

 ディスプレイを表示させて、

 大手通販サイト〇マゾンを開いた。


「ずいぶん、現代版のぱんだだな。

 どれどれ。」


(駅員も使うふとんに空気を送る

 『やすらぎ』だ。)


「ぱんだ先生、いつから通販番組を

 放送するように?」


 ぱんだの体に見たことあるエプロンが

 つけてあった。


「でも待てよ、

 これなら、起きられそうだな。

 音が鳴るより、体が自動的に跳ね起きる。

 やってみるかな。

 てかめっちゃ高いだろ。

 人一人雇うくらいの金額だわ!!

 高校生にすすめるな。

 やべ、もう、遅刻しちゃう。

 ちょっと、時間教えてくれても

 よくない?」


 都合の悪くなると消えてしまうのか、

 床にピロピロ笛が落ちていた。


「ちくしょー。逃げたな。」


「ひなた!!遅刻するよ!!」


「今、行くっつぅーの。」


 母の叫ぶ声にひなたは慌てて、

 制服に着替え、

 リビングに続く階段を駆け下りた。


 今度は、自分で起きられるのだろうか。


 ぱんだ先生もこればっかりは 

 とあきれ顔だ。

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