第3話 原始の森

 僕たちは【原始の森】の入口に到着した。

 今のところ、獣や魔物は森の外には出て来ていない様子だ。

 だが、森の気配がざわついているのが感じられる。

斥候スカウト、この森にはどんな獣が住んでいるんだ?」

 重騎士ヘヴィナイトのタムリンが、聞いてきた。

「通常はアルミラージ…角の生えたウサギだな。それとボアやビッグベアの派生種くらいだ」

「魔物はどんなのがいるんですか?兄さん」

「ホブゴブリンやオーク、大きいのでトロルかな」

「それで、なんでソイツらの動きが活発化しているんだ?」

「この前、ちょっと森に入って調べてみたんだけど…」

「え、兄さん1人でですか?」

「僕、斥候スカウトだからね。調べるだけなら全然問題ないよ」

「じゃあ、依頼完了なのか?まだ何も暴れてないぞ」

「どうやら猛獣のグレートベアが何頭かいる様だ。ソイツらが、森の獣や魔物を追い立てているのが原因みたいだね」

 戦闘が出来ると思ったタムリンが嬉しそうに、

「グレートベアを倒せばいいんだな!」

「そう来ると思ったよ。だから、森の獣や魔物と遭遇しにくいルートを探っておいた」

「いい仕事してんじゃねえか斥候スカウト

「余計な討伐は森の本来の生態系に影響しちゃいますから…それと姉さん、僕の名前はベイカーです」

「実力を認めたら呼んでやるよ斥候スカウト

「あざーす、姉さん」


斥候スカウトいやベイカー、このルートって道じゃないだろ!ちょっと厳し過ぎやしませんかね?」

「何言ってんですか、ほんのちょっと切り立った崖を登るだけですよ。王国騎士団の鍛練に比べたら屁でもないでしょう」

(あ~こいつ鬼だ!絶対、鬼軍曹だ。斥候スカウトなんて呼び捨ててスイマセンでした)

(兄さん、さすがです)

 タムリンとプロトは心の中で呟きながら、急勾配の崖をヒョイヒョイ登っていくベイカーの後を必死に追いかける。

 すでに、いくつもの断崖絶壁を降りたり登ったりしている。

(さすがにこれだけ厳しい地形では、獣や魔物もほとんどいないのはわかる…わかるのだが、そんなとこを人間が行くことに疑問を抱かないのだろうかコイツは…)

 さすがのタムリンも、こんなヤツを師匠に持った妹が不憫に思えてきたのであった。


 崖を登り終えたベイカーは、目を凝らすと森の木々が不自然に揺れている場所を探す。

 しばらくすると、息も絶え絶えなタムリンとプロトが合流した。

「グレートベアの居場所が特定出来たよ。あそことあそことあそこ3頭いるね」

「よし!じゃあ、やっとアタシの出番だな。ベイカー、余計な手出しすんじゃないよ」

「あいよ姉さん、プロトと一緒に周辺を警戒しているよ。グレートベアはビッグベアの2倍近いデカさだ。軽装備スタイルじゃなく、重騎士スタイルの方がいいんじゃないか?」

「ご忠告、ありがたく頂いておくよ。猛獣狩りワクワクして来たな~」

 息も絶え絶えなはずだったのに、バトルジャンキーなタムリンは放たれた弓矢の様に疾走して行った。

「やれば出来んじゃん!やっぱ姉妹だな、タムタムと同じで鍛え甲斐がありそうだ」

「兄さん…笑顔がコワイデス」

「プロトも獣か魔物がいたら、少し狩ってみようか?」

「了解です、兄さん」

 この素直さ…癒される~。

 

 

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