第26話「番長の帰還」

俺は皆にとても重要な事を伝えるべく全力で走った。

すぐに追い付いてきたアリスと凛は俺と並走している。


「真澄君!そんなに急がなくても」

「そうですわ!真澄!危ないですわよ!」

「いや、美味しいお肉がまっているんだ!

早く皆に伝えないと!」


俺は走った、キャンプ地へついた俺は息を切らしながらも狩り班の所へ行く。


「ぜえ、はぁ、んぐっ、み、皆、聞いてくれ」

「ど、どうしたんだ?そんなに息を切らせて」

「さ、斎狐先生に、はあはあ、とても良い事を教えてもらったんだよ!」

「良い事を?」

「昨日食べた鳥、うまかったよな!」

「ああ、あれは旨かった、塩胡椒だけでかなりうまかったなあ」

「斎狐先生のオススメはイノブタらしい」


そう言うと狩り班の面々は真剣な表情をした


「詳しく」

「昨日食べた鳥よりも旨いらしい」

「な、なん、だと!?」

「だからさ、イノブタ、探そうぜ」

「ヨッシャアアアァッ!!イノブタ狩りじゃあ!!」


かつて無い程に狩り班のテンションが上がる

この日、謎の一体感をクラスの狩り班と共に感じつつイノブタを探しだした俺達は昼、晩とイノブタを味わったのだった。

え?味は?もちろん、美味しゅうございました。

そしてついにサバイバル3日目の朝、そう、サバイバル終了の日だ。

テントを片付けていると帰ってきたのだ!


「番長!」

「悪い、変な事に巻き込まれた」

「いや、心配したよ!無事で本当に良かったよ!

でもさ、どうしたの?その格好?」


帰ってきた番長はジャージ姿ではなく

何やら毛皮の服の様なものを着ていた。

肩には長い牙を持った虎の様な動物の頭がついている。


「まあ、色々と、な。

先にテントを片付けしまおうか、後で話す」

「わかった、あのさ」

「なんだ?」


俺は右手を握りしめて番長の前に差し出した


「番長、おかえり」

「・・・はっ、ああ、ただいま」


俺と番長は握りしめた右こぶしを軽くあてあった。

お互いに笑いあってテントをたたむ作業をしている皆の中に入っていった。


テントを片付けて荷物を斎狐先生のジェットの中に運び込んで一息ついていると番長に

話しかける。


「なあ、番長、一体何処でなにしてたんだ?」

「ああ、そうだな・・・斎狐の奴が来たら話す、オレにも何であんなことになったのか

いまいち分からないからな」

「山の方で何かあったのか?」

「あったと言えばあったが・・・実際に見た方が早いかもな」

「みる?」


俺はよく分からないなりに取り敢えず斎狐先生の到着を待つことにした。


「おや?万場君、ここ3日間全然見かけなかったけど何処に居たんだい?」

「斎狐、オレの記憶を映像化してくれ」

「ああ、そうか、君は説明が難しいか信じられない事が起きたんだね?」


ジェットに乗り込んで斎狐先生がモニターやら変な輪っかを番長の頭に取り付ける。

ノートパソコンを操作して何かを確認すると番長に声をかける。


「万場君、準備ができたよ、いつでも流せる」

「じゃあ、始めてくれ」

「了解、と」


そして、モニターに番長の記憶映像が流れ始めた。


──サイド万場──

輪道と別れたオレは山へ向かって走り出した。

何故か気になるのだ。

あそこへ行かなければならないとオレの勘がそう言っている。

勘と言うものの、ある意味で確信めいた物がある。

何かがあるとそう信じていると言えば良いのだろうか?

この勘は当たるのだ。


「山の麓まで来たが・・・」


オレは辺りを見回すと再び勘が働く、

勘が導くままに山の側面に回っていくと

洞窟があった。


「・・・この中、か?」


何の準備もなく流石に無謀かと考えたが

オレの勘は迷わずに行けと言っている。


「・・・行くか」


オレは能力を発動させて聴覚と視力を強化する。

わずかな光でもうっすらと視える。

それと音の反響で視えない部分を補足している。

しばらく進むと何やら行き止まりのように音が返ってくる。


「おかしいな、オレの勘が目的地はこの先だと言っているが?」


オレは周りの壁に手を触れさせるが何も無い

ただの行き止まりだ。


「・・・帰るか?もう少し調べて──」


すると空間が歪んだ様な気がした。


「何だ?今のは」


ただの壁のはずだった。

その壁に触れると目の前の空間が波紋の様に揺らぎ始める。


「何だ?これは?」


ずっと触れていると波紋は激しくなり

少しずつ波のように荒くなっていく。

触れている感触は硬い石壁なのにまるで

渦をまくかのように激しさを増して歪んでいく。


「ん?何か引っ張られ──」


次の瞬間、オレの視界は




森を映していた。


「・・・・・はっ?」


後ろを見てみると岩肌が見える壁、前に視線を戻すと森、しかも明らかに植生の異なる

樹齢が百年単位の巨樹達だ。


「・・・・・はぁっ!?」


再びオレは後ろに振り返り石壁に手を触れさせる。

しかし、何も起きない。


「・・・おいおい、マジかよ」


しかも、だ。

視界の端に何か見える。

信じられない物が、だ。

オレは額に手を当てながら空を仰いだのだった。

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