ゾンビ&シェイク



真弘と星那、2人きりの生き残るための日々が始まった。



「ーー電気と水道はダメ。ガスはプロパンだったからかろうじて使えると……。テレビはつかないし、ラジオはそもそも無いし、スマホも充電切れてるし、全部ダメ。食べれそうなのはカップラがちょっと……これ、お手上げでは……?」


「戻ったわ」


「あっ、おかえりなさい星那さん」



真弘が自宅の状況を確認していると外に出ていた星那が大きなリュックサックを背負いパンパンに膨れ上がったビニール袋を両手に引っさげて帰還した。


ゾンビに見つかれば追いかけられて襲われる真弘に対して星那はゾンビに見つかっても襲われることはなかった。おそらく星那の身体の半分がまだゾンビだからというのがそうなっている理由だろう。


そのため真弘は自宅に残り、星那が周辺の探索に出かけていた。



「どうでした?」


「ダメね。この辺り一帯に生存者はいなかったわ。みんなゾンビ。とりあえずコンビニで食糧を拝借してきた。かなり荒らされてたけど、まだ少しは残ってたから」


「ご馳走様です!」


「誰もあなたにあげるなんて言ってないけど?」


「そんな殺生なッ……!」


「ふふっ……。冗談よ。食事にしましょう」



お湯を沸かしてカップ麺を食べる。


久方ぶりの現実世界の食事が身に染みて感動したが、ルーリスリアが作った料理の方が美味しいと思う真弘。異世界にいた頃は「なんやねんこの不便な世界。クソがっ」なんて思っていたが、こんなゾンビパニックしてるなら異世界に居たままの方がマシだったと後悔した。時すでに遅し。途端にルーリスリアが恋しくなる真弘である。



「何故か無性に肉が食べたいわ……」



カップ麺をすすりながら星那がボソリと呟いた。


その発言を聞いて真弘が後ずさる。



「まさか……!ゾンビ的なアレで、物理的に俺を食べたいとか……!?」


「あなた……美味しそうね……」


「ちょちょちょちょっ!?まってまって!冗談ですよね!?ちょっとしたゾンビジョーク的な奴ですよねソレ!?もしくは性的な意味合いで美味しそうって言われてるならウェルカムなんですけど多分意味違いますよね!?」


「あまり騒いで食欲が掻き立てないで。ふぅ……。正直な話、わりと冗談じゃないわ」


「イヤーッ!食べたないでぇッー!」


「食べないわよ……多分。まだ、大丈夫。まだ、なんとか、抑えられるわ。けど……このまま、だと……もしかしたら、不味い、かも……」



星那は何かに耐えるように頭を抑えて苦しげな声を出す。心無しか朝方は半分ほど元の色に戻っていた肌の色が、また青紫色に侵食されているような気がした。



「まさか……ゾンビに戻りかけてる……?」


「……そう、かも」


「つまりこれはまたセックスしないといけないヤツですかね!?」


「そう嬉しそうに言われると無性に腹が立つけど……」



嬉々として声を高らかに言う真弘を見て星那は深い深いため息を吐いた。



「はぁ……。現状考えられる手立てはそれしかないか」



ゾンビ化していた星那の身体が半分ではあるが人間に戻り、さらには人としての意識を取り戻した要因。ヤッたことはひとつしかない。真弘が星那の体内にしこたま生命エネルギーをぶち撒けた……ほぼほぼその行為のおかげであることは明白だった。


その事は真弘も分かっているし、星那も理解はしている。理解はしているが、それと気持ちは別問題。ゾンビだったからとはいえ、人の身体を好き放題に弄んだ真弘に星那は少なからず忌避感を覚えていた。


初見の印象は最悪である。ぶっちゃけ星那は真弘のことが嫌いだ。当然の話だ。


しかし、せっかく人の意識を取り戻せたのに、またゾンビに逆戻りするのは真っ平御免だった。ゾンビになるというのは死と同義だ。


それらを天秤にかける星那。いや天秤にかけるまでも無い。またゾンビになりたくなどない。ゾンビになるぐらいなら真弘を受け入れる方がマシだった。


ちょっと目をつぶって我慢していればいいだけの話だ。それに半分はまだゾンビだからか感覚が鈍い。真弘との行為はちょっと股あたりに違和感がある、それだけの行為だ。



「あなたとするのは嫌だけど……。言っておくけどしたいわけじゃないから。仕方なくするだけで、勘違いしないで」


「くくくっ、そんなこと言っていいのかな?ちゃんとオネダリしないと中に出してやらないぜ?」


「あなた、食われたいの……?まずは下半身にぶら下がってる、それ。食いちぎるわよ」


「本当に申し訳ありませんでした!頑張らさせて頂きます!」


「はぁ……。なんでこんなヤツとしなくちゃならないの……最悪。さっさと済ませて」


「かしこまりました!」



真弘はこのあとめちゃくちゃ腰振った。








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