第5話 品川から来た男

普段の朝だった。


ユウトは東京メトロ 市ヶ谷駅から会社に向かう途中の富士そばで、いつものように

シロー先輩が遅れて合流した。。


「おはよう、今日から赴任される新しいシニアマネージャーやけど、

品川(サニー本社)から来るらしいねん。」


「へえー、そうなんですか。」


「品川に同期の奴がおるから聞いてみてん。そしたらな、もともと

EPS(電化製品)の 生産技術出身でウォークマンの開発してた人みたい

やねんなあ。だがら年齢も 70歳超えてるらしいわ。」


「ほんとのシニアですやん。」


「かなりの熱血漢みたいやから、様子見やな。」




AM9:15

朝礼時に、事業部長から今回赴任されたシニアマネージャーを紹介され

星野さんが挨拶をした。


「初めまして、星野です。」


「声、ちっちゃ。」


「シー。静かにしとけ。」


「みなさんには、事前にお願いしていたことについて午後に打合せしたいと思いますので細かいことはその時にお話します。」と星野は弱々しく告げた後、部屋から出て行った。


「先輩、よぼよぼですやん、どこが熱血漢なんすか。でも秘書の小沢さん女優の北川景子みたいで綺麗ですね。」


「確かに、熱血漢って感じじゃなかったな。また、同期に聞いとくわ。」


「それより、課題事項完了してる?」


「story.comのここ3日間のお題に投稿している作品を全部読んで、上位と

下位3名のユーザーさんを選ぶやつでしょう。もうちょっとで終わりますよ。」


「早よやっとけよ。集計あるから10時までには完了させてや。」


「わかりました。」

二人はそれぞれの作業に移った。



PM14:55

会議室には、5分前に入ったがほとんどのメンバーが席についていた。

シロー先輩の横が空いていたのでそこに座った。すると先輩がおもむろに

話しかけてきた。


「あれから、また品川の同期に詳しく聞いてみたんやけど、滅茶苦茶

すごい人やねん。」 


「星野さんのことですか?」


「もちろんや。なんでもカセットのオートリバースを発明した人やねん。」


「オートリバースってなんですか?」


「そうか、わからん世代か。ウォークマンははわかるやろ。」


「それ位はわかりますよ。」


「カセットってレコードみたいにA面とB面があってな、A面を聞き終わったらカセットを一回取り出してひっくり返してB面側にセットしてから

聴いてたんや。オートリバースは、テープを読み取るヘッドが自動的に

反転して連続で聞ける機能やねん。これは無茶苦茶画期的なことで、

当時はこの機能が付いてるウォークマンやラジカセがバカ売れしたんや。」


「そうなんですか、オートリバースの便利さはいまいち分からないっすけど、何かすごいことはわかります。」


その時に、会議に佐藤シニアマネージャーが入ってきた。

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