詩集【スマートフォンで読む私的宇宙】

路肩のロカンタン

頭の中に家を建てる

 あの頃、私が書いていた詩の輝かしい断片たちが

 嘔吐物だらけの部屋に次々と立ち現れ、私にこう言った

 大小様々な

 声を揃えて


「お前が今まで無駄にしてきた時間で、今度の春には家が建っただろうにな」


 嗚呼、腹が立つ

 腹が立つ

 何故こんなにも矮小で猥雑で

 卑近な頭の中のあれこれを

 言葉だなんて、近代的なツールに

 落とし込まなきゃならんのか?


 若さも情熱もいらないから

 宇宙もタワーマンションもいらないから

 せめてあの瞬間だけを

 この掌にそっと乗せておいてほしい


 あれから十年も経って

 私はまだ詩を書き溜めている

 一瞬の閃き

 一瞬の煌めき


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る