第3話 幕府の追及と逃亡の日々



代官屋敷での穏やかな日々が続いていた。先生は武士としての礼儀や作法を教え、江戸時代の文化や習慣を私に教えてくれた。私たちは、百科事典が元の時代に戻る唯一の鍵であることを心に留め、その知識を深めていた。


しかし、ある日、私たちの静かな生活は崩れ去った。代官屋敷には幕府の者たちが現れ、先生に対して厳しい尋問が始まった。彼らは先生が異世界から来た可能性を疑い、先生の言葉に疑念を抱いていた。先生は、何も知らないと言って弁明したが、彼らは納得しなかった。


「この部屋を捜索せよ!」という幕府の者の一声で、屋敷に緊張が走った。

私は、先生の部屋に駆けつけ、先生の大切な百科事典を守ろうとした。しかし、私の手には届かず、幕府の者の一人に百科事典を奪われてしまった。


「なんだこれは!?」と幕府の者が叫んた。彼は百科事典をめくり、未来の出来事が書かれている預言書と思ったようだった。百科事典を手に入れ、先生を逮捕しようとする彼らに対抗すべく、私は立ちあがった。


「先生!」と私は叫んだ。私は、先生を助けるために、幕府の者に突進した。幕府の者の一人が私に斬りかかってきた。私は、素早くかわして、彼の手首を掴み、彼の手から刀をひったくり、先生に投げ渡した。先生は、刀を受け取って、すぐに構えた。幕府の者は、先生に襲いかかったが、先生は敏捷に動き、彼らの攻撃をかわした。

私は、百科事典を取り返そうとした。けれど、幕府の者の一人に足を蹴られ倒れた。それでも私は必死に立ち上がり、彼らに噛みついたり、引っ掻いたりした。私は、怯えなかった。私は、先生と百科事典を失いたくなかった。百科事典は、私たちの未来そのものだから。


なんとかして幕府の者たちを撃退し、代官屋敷から脱出した。馬に乗り、街を後にし、安全な場所へ向かわねばならなかった。私たちは追手から逃れる逃亡者となってしまった。


「先生、どうしよう?」私が先生に尋ねると、先生は深いため息をついた。

「晴香さん、ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって。」先生の言葉には謝罪の意が込められていた。先生は、この時代に来たことを後悔しているのだろうか。


「いいえ、先生。私は、先生のせいだとは思っていません。私は、先生と一緒にいたいです。」私は先生の手を握った。私は、先生に寄り添いたかった。


先生は私の手を優しく握り返し、「ありがとう、晴香さん。私も、あなたと一緒にいたいです。」 と先生は私の目を優しく見つめて言った。先生は、私を大切に思ってくれているのだ。この時、私は、先生となら、どんなところだって、たとえ、地獄だって、幸せなんだろうと感じた。


「でも、どこに行けばいいのでしょうか?」と私が不安げに問いかけると、先生は「そうだな…」と考え込んでいる様子だった。


先生は手を叩いた。


「あ、思い出した。私は、ある場所に行きたいんだ。」 先生は目を輝かせて言った。


「どこですか?」私は興味津々で尋ねた。


「それは、私が以前に住んでいたところなんだ。」 先生は空を見上げ、目を細めて言った。


「えっ、どこですか?」私は、興奮しながら訊ねた。


「それは、京都なんだ。」


「京都ですか?」


「うん。私は、京都に住んでいたときに、ある人に出会ったんだ。彼は、私にとって大切な人だった。」 先生は微笑みながら語った。


「誰ですか?」私は、興味津々に尋ねた。 先生が以前に住んでいた京都で出会った人物とは、一体誰なのだろうか。


「彼は、私の師匠だった。彼は、私に歴史や文学を教えてくれた。彼は、私にとって尊敬すべき人だった。」 先生は懐かしそうに微笑んだ。 先生の目には、師匠との思い出が浮かんでいるようだった。

「すごいです。」と私は感心した。先生が歴史や文学に詳しいのは、師匠のおかげなのだろうか。私も、師匠に会ってみたいと思った。


「彼は、私に手紙を送ってくれていた。彼は、私たちがこの時代に来た理由や、元の時代に戻る方法について、何か手がかりを見つけたと言っていた。」と先生は期待を込めて言った。先生の声には、希望が溢れていた。


「本当ですか?それは、嬉しいです。」と私は喜んだ。


「私たちは、この時代に来てからずっと、元の時代に戻る方法を探していた。もしかしたら、師匠がその方法を知っているのかもしれない。だから、私は、彼に会いに行きたいんだ。彼なら、私たちを助けてくれるかもしれない。」と先生は力強く言った。


「わかりました。では、私たちは、京都に行きましょう。」先生に思わず抱きついてしまった。


私たちは、京都に向かって馬を走らせた。私たちは、幕府の追及をかわしながら、逃亡の日々を送った。私たちは、歴史の渦中に巻き込まれていた。

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