サークル活動でポロリ(男性視点・衆人環視)

『大学生なんて人生の夏休みなんだから、めんどくさいこと考えないで、楽なことだけやったらいいじゃないか。』


カメラのレンズ越しに長髪の男がそう言った。

芝居がかった台詞だが、彼の演技力により自然な会話のように入ってくる。


『あんたに何がわかるのよ!』


黒髪の美少女がそう言い返した。その表情は本当に怒りを覚えているように見える。

男は意に介していないようで、両手をひらひらとさせながら半笑いで答えた。


『わかるね。夢なんて追ったって何も手に入らない。俺がそうだったからな。』

『一緒にしないで!』


少女はくいっと振り返ると部屋を飛び出し、最後にドアをバンッ、と叩きつけた。


「カット!」


俺の後ろで高木がそう叫んだ。

途端に静まり返った撮影所がざわつきだす。

台本をめくる者、照明の調子を確認する者。

俺もカメラのファインダーから目を離し、ふーっと息をついた。


「悪くないんだけどな…。」


高木は先ほどのシーンを見て顔をしかめていた。


「もう少し寄るの早くしてもらっていい?」

「振り返る前あたり?」

「そう、そのへん。」

「あいよ。」


高木の指示に俺はカメラを調整する。こんなやりとりももう慣れたものだ。

大学で出会ったこの映画製作サークル「シネマ倶楽部」に入ってもう3年。カメラと編集担当の俺は、監督の高木の無茶ぶりをずっと聞いてきた。

気難しいこの男は、実はちょっとすごい奴だったりする。


「真理子! ちょっと来て!」


高木の呼びかけに俺は顔をあげる。

先ほどの美少女が、先ほどとは全く違う笑顔でこちらに走り寄ってきた。


「さっきのシーンなんだけど…。」


高木と話し込む真理子を、俺はじっと見つめる。

身長はさほど高くなく、モデル体型とは言い難いが、美しい黒髪と端正な顔立ちから、このサークルではいつも主演女優を務めていた。

本人も女優志望で、小さな映画のちょい役なんかに応募してはいるが、いつも落選して悔しがっている。


「…そんな感じで。あとは伊藤と相談して。」


高木の言葉に真理子がこちらに向きなおった。

大きな瞳に俺は吸い込まれそうになる。


「伊藤さん、どんな感じにしましょう?」

「そうだな…、さっきの立ち位置なんだけど…。」


俺は動揺を悟られないように指示を出す。

うんうんと頷き、時折笑顔を見せる彼女に、俺の胸は締め付けられる。

カメラで真理子を撮り続けているうち、俺の心は完全に彼女に奪われていた。

でもそれも今回が最後。3年生の俺たちはこの映画をもって、引退することが決まっている。

だから俺は、最後に彼女を最高に美しく撮るのだと、心に決めているのだった。


******************************************************


「それで、次のシーンなんだが。」


高木が話し始めた。

集められたのは俺と真理子、真理子の相手役の俳優、健吾だった。


「台本を変えて、ラブシーンを撮りたいと思う。」


高木の衝撃発言に、俺は思わず目を見開いた。

次のシーンは2人が仲直りするシーンのはずだった。


「つ、つまり、濡れ場ってことっすか。」


相手役の健吾は動揺を隠しきれていなかった。

健吾と真理子は同じ2年生なので、2人の間には微妙な緊張が流れていた。


高木は頷く。

色々な映画を撮ってきた俺たちも、本格的な濡れ場は経験がなかった。

そんないきなりの変更、しかも顔見知りの男女で濡れ場なんて…。


「わかりました。高木さんが必要だって言うなら。」


意外にも真理子は力強く答えた。

それほど高木という男は信頼されている。奴の監督する作品はどれも秀逸で、学生コンペに出品してはいつも賞を獲得していた。真理子は高木のセンスを信じているのだろう。


「ありがとう。ただ、もうひとつお願いがあって。」


高木が真理子の目をじっと見つめる。


「そのシーンで、真理子にはヌードになってもらいたいんだ。」

「えっ!」


俺は堪えきれずに声をあげた。ヌードだって? 聞き間違えじゃないよな?

真理子を見ると、さすがに驚いた表情をして、すぐに顔が赤くなった。


「…ごめんなさい。それはさすがに無理です。」

「頼む! 最後の映画なんだ。最高のものを作りたい。」


高木は真理子から目を逸らさない。その視線から、邪な下心は一切感じられなかった。

本当に、映画のためだけに、幼気な後輩の女の子にヌードをお願いしているのか?

変態にもほどがある。


「無理です。私彼氏もできたことないのに、ヌードなんてできません。」

「そこを何とか! ヌードが無理なら、下着姿でも構わないから!」


食い下がる高木の勢いに、真理子は押され気味だった。


「…すこし考えさせてください。」


真理子の言葉に、俺はどこか胸が高まるのを感じた。


******************************************************


撮影当日。

サークル内は緊張感が漂っていた。

結局ヌードはNGで、(当たり前だ。)下着での撮影になったわけだが、

それでも撮影所には十数名のスタッフがいるし、その半数以上は男だった。

その中で下着姿を披露することになる真理子は、いつも以上にガチガチに緊張していた。


『いつか、女優として濡れ場をやることになるかもしれませんから。』


昨日までは空元気でそう言っていた真理子だったが、今の姿を見ると心配になる。

でも、本人がやると決めたことなので、俺は彼女を美しく撮ることに全力をかけようと思った。


そして撮影が始まった。

カメラのレンズ越しに、真理子が健吾の上に馬乗りになる。

その表情は若干の緊張が混じっているが、普段とは全く違う妖艶な顔つきだった。


ついに真理子の手がTシャツの裾を掴み、するすると持ち上げていく。

真っ白く細いお腹が見え始め、少しづつ、その上の膨らみまで露わになる。

Tシャツを脱ぎ捨てると、真理子の上半身は純白のブラジャーだけになった。

さすがに撮影用の下着だろうが、それでも動揺してカメラを持つ手が震えそうになる。

人並程度に膨らんだ乳房と、下着の間に見え隠れする谷間が、照明にあてられて色めかしく輝いていた。


ズボンも放り投げ、完全な下着姿となった真理子は、健吾のうえで上下運動を始めた。

これが俺たちができる限界表現。生々しく喘ぐ真理子の女優魂に、俺は心の中で拍手を送った。


そのとき、予想外の出来事が起こった。

寝そべる健吾の右腕が持ち上がると、静かに真理子の背中に回った。

台本にはない動きに、俺は思わず高木のほうを振り向いた。

しかし、高木は全てを知っているかのように、静かにその光景を見つめていた。


高木のその姿に、俺は再びファインダーを覗き込む。

真理子は健吾の右腕には気づいていない。健吾は真理子の背中側でブラを掴むと、一瞬でホックを取り去った。


誰も声を出さないが、撮影所は驚きに包まれていた。

真理子は微かに何かを感じ取ったような顔をしたが、彼女が事態を把握するより早く、健吾はブラジャーの肩紐を掴むと、一気にずり下した。


ファインダー越しの俺は、その光景がスローモーションのように見えていた。

無抵抗の真理子の乳房は、ブラジャーをはぎ取られた反動で上へと跳ね上がる。

形を変えるその膨らみの先端に、薄いベージュ色をした可愛い乳首が佇んでいた。


反対側の肩紐も力なく腕をすべり落ち、ついに真理子の上半身は完全に裸になってしまった。

下着を失っても真理子の乳房は綺麗な三角型を維持しており、小刻みに揺れながらその存在を主張している。

乳首はまだ穢れを知らないかのように綺麗で、小さめの乳輪の真ん中に、可愛らしい突起がぴょこんと乗っかっていた。

真理子はというと、一瞬体がぴくっと強張り、動揺と恥じらいが入り混じった表情を浮かべたが、すぐに演技に戻った。

それどころか、なんと先ほどよりも激しく、艶やかに喘ぎ声を上げ始めた。

その姿はただただ美しく、俺は思わずファインダーから目を離し、真理子の姿を直視した。


美しい彼女の顔は赤く高揚し、髪を色っぽく振り乱している。

そしてそのすぐ下に鎮座する、彼女の生のおっぱい。

上下運動に合わせて揺れるその乳房の先端は、心なしか先ほどより大きく膨れているようだった。


二人は上下を入れ替え、健吾が覆いかぶさる体位へ移行する。

俺はカメラでその姿を追った。このアングルでは真理子のおっぱいは見えないが、かえって本当に事が行われているかのような錯覚を覚えるほど、2人の演技は迫真のものだった。

シーンが最高潮に盛り上がったところで、どこか遠くのほうで高木が叫ぶのが聞こえた。


「カット!」


******************************************************


撮影が終わると、服を着た真理子が高木のところへ飛んできた。

演技ではない、心底腹を立てている表情だ。


「高木さん!! 健吾にブラを外せって指示出したの、高木さんですよね!? 最低です!!」


彼女の怒りはもっともだった。十数人の、しかも顔見知りの男たちに、彼女は裸を晒してしまったのだ。

高木は表情を崩さないまま答えた。


「勝手なことをしたのは申し訳ないと思っている。でも、おかげで最高のシーンが撮れた。」

「ふざけてるんですか!?」


真理子の怒りは収まらない。


「あなたの映画なんてもうどうでもいいです!」

「本当か?」


高木はゆっくりと立ち上がった。


「下着を脱がされたとき、君は演技をやめることもできたはずだ。それでも続けたのは君じゃないか。」

「それは…。」

「君も最高のシーンになると思ったからじゃないのか? 事実、ヌードになってからの君の演技は神がかっていたぞ。」


高木の言っていることは無茶苦茶だが、確かにあの時の真理子の演技は尋常ではなかった。


「と、とにかく! あんなシーン認められません! カットしてください!」

「それはできない。」


2人はしばらく意固地に言い合っていたが、さすがに彼女を憐れむスタッフが加勢し、折衷案としておっぱいが映っているシーンはカットされることになった。


「そういうことですから! 頼みますよ、伊藤さん!」


真理子は怒りの矛先を俺に向けると、足早に撮影所を出て行った。


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その夜。

俺は自室で例のシーンの編集をしていた。

俺は悪いとは思いながらも、真理子のヌードシーンを何度も再生した。

彼女の美しい乳房と、淡く咲き誇る乳首を食い入るように見つめる。

不思議とエロさは感じられず、生で見たときと同じ感動が心を満たしていた。

しかし、このシーンはカットしなければならない。

俺は密かに動画を自分のPCにコピーすると、大幅なカットの編集作業に移った。


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そして試写会。

サークル全員が見守る中で高木の最後の作品が上映された。

濡れ場のシーンでは真理子が緊張した表情をしていたが、映っているのは下着のシーンと体が見えない正常位のシーンだけであることを確認し、安堵したようだった。

大幅なカットがあったにもかかわらず、高木の作品は素晴らしいものだった。

スタッフが口々に賛辞を述べるなか、意外にも真理子が高木のもとへ歩み寄った。


「高木さん。」


高木もまっすぐ真理子を見つめ返す。


「私まだ、高木さんのこと許してませんけど、作品はとても良かったです。一応、伝えておきます。」

「そうか、ありがとう。」


高木は無表情で答えた。本当に、よくわからない男である。

真理子も相変わらずぶすっとした顔をしているが、以前よりも態度は軟化しているようだった。

恐らく、二人とも映画の出来栄えに満足したのだ。根っからの映画好きというところは同じらしい。

俺はそんな二人の肩を叩いた。


「さあ、みんなで打ち上げに行こうぜ!」


こうして、俺の青春は幕を閉じたのだった。


******************************************************

数年後――。

サラリーマンになった俺は、疲れた体を引きずって家へと帰ってきた。

何の気なしにテレビをつけると、流れるドラマの画面の端に、見覚えのある美少女が映っていた。


真理子だ。


真理子はようやくオーディションに受かるようになったらしく、清楚なキャラクターを売りにしたちょい役で、ドラマや映画に出演するようになった。今でも連絡は取りあっているが、どんどん手の届かない存在になりつつある。


当然、彼女は濡れ場などやらない。

清楚で売ってる以上は今後もやることはないだろう。


あの映画はサークル内の限られた人間しか持っていないから、世に出回ることもない。

俺たちだけの思い出だ。


でも、あの映画のノーカット版を持っているのは、俺しかいない。

それだけは何があっても明かせない、俺だけの秘密だ。

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