第4話 最初の石

「ルナー、どこー?」

大きめの声で呼びかける。すると、建物の奥から白髪の少女が出てきた。

「あれ、リズ。どしたの?」

リズとは私の愛称だ。本名はリズベルトである。

「なんか今日の敵に新種がいたんだよね。それも2体も!」

ルナは研究院には所属していないが、敵の研究をしている。そのため、新種のことを伝えに来たのだ。

「それはそれは、お疲れ様。で、どんなのだった?」

「なんかね、花みたいなのとアルマジロ。」

「アルマジロ?あの?巨大ダンゴムシ的な?」

「そう。」

「転がって突進してくるとか?」

「特に何もしてこなかったよ。」

「なんだそれ。」

ルナにもアルマジロのことはよく分からないらしい。

(花と蕾だから、次は木でも来るのかな?)

と呑気なことを考えていると、

「その新種2体描いてみて。」

スケッチブックと鉛筆を渡される。

「花は…ほんとに花って感じだったよ。こんな。」

黒い花弁と白い中心部を描く。

「確かにそれは花だね。」

頷きながらルナが賛同する。

「アルマジロは…塔の足に絡みついてたんだよね。」

「え、ちょっと待って。塔にいたの?街?」

「あ、そう!街にいたの!びっくりだよね。」

「そっちを進めてきたか…」

ルナはブツブツ言いながら部屋の奥に戻ってしまった。

(アルマジロはなんか大きな葉っぱがあったよね。それで後ろ側からツタが生えてて、塔に絡みついてた。これでよしっ!)

「ルナ、できたよー。」

「見せて。」

スケッチブックを見せる。

「これ蕾じゃない?」

「そうだよ?」

……

「リズはアルマジロって言ったよね?」

「何となくわかるかなって。」

「わかんないから!アルマジロだと思ったよ!」

「あ、そなの。ごめん。」

怒りながらスケッチブックから私の絵を破り、壁に貼り付けた。壁には私が描いた様々な敵の絵が貼ってある。

「リズ。」

「何?」

「これ持ってて。」

拳程度の小さい巾着を渡された。

「中見ていい?」

答えを待たずに巾着を開ける。中には白い石が入っていた。

「なにこれ?」

手に取ってみるが、普通の石と変わらずひんやりとしているだけだ。

「いいから。持ってて。」

「?わかった。」

よく分からないが邪魔になるようなものでもないので従っておく。

「じゃあそろそろ研究院の方行ってくるね。」

「うん。」

部屋を出ようよすると、

「リズ!マンモスに気をつけて。」

ルナに訳の分からないことを言われた。

「マンモス?」

「これ。占い。」

「あー。なるほど。確かにマンモスっぽい?」

ルナがよくやってくれる砂と水を使った占いだ。本当によく当たるから信じている。

「わかった、気をつける。じゃあね。」

「うん。」

部屋を出て、研究院へ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る