くとりぎ-精神科病棟であった怖い話-

西塔鼎

2020年6月18日の地元新聞記事より抜粋

Y県境座市にて山火事発生、原因は焚き火の不始末か


 境座市の供借山くがりやまで17日、大規模な山火事が発生し、近隣住民の1人が重傷、32人が煙などにより軽傷となっている。

17日11時に「山が燃えている」と119番通報があり、消防隊が出動した段階ではすでに広範囲の延焼がみられていた。

 県警によると出火の原因は近隣住民の焚き火の不始末によるものとのことで、当該の男性(36)は現在やけどのため入院中となっている。

 この火災にて山中の狗見いぬみ神社が全焼したとされており、男性と同居していた父親が行方不明。また現在も鎮火の目処は立っていないため引き続き県警は周辺住民に注意を呼びかけている。


――2020年6月18日の地元新聞記事より抜粋


     ■


 某バラエティ番組の2021年2月25日放送分より音声のみ、文字起こし


「スタジオのみなさ~ん、どうもこんにちは! 『ミルキィロード』の犬山まろんです! 今日はレポーターとして、地元でも名所として有名な供借山に来ています」

「供借山といえば、去年の山火事でいっぱい焼けちゃったらしくてぇ、ちょうどこのあたりにあったっていう神社もなくなっちゃってぇ、今はこの……なんですかねこれ(笑) なんかちっちゃな石が並んでる――記念碑みたいなもんかな? なんかそんなのが残ってるだけなんですけどぉ」

「それよりどうですか~、見て下さい! 冬晴れっていうんですかね~、向こうの山のてっぺんに雪がかかってるのがきれいに見えます。今日は気温もちょうどよくて、ここで寝たらさぞかし気持ちいいだろうな~って感じですぅ」

「このあたりは桃も名産ということで、桃を片手にハイキングなんていうのもイイ感じじゃないでしょうかぁ。……スタッフさん、実はもってきてたりとかないですか? ……あ、ない? 残念~。皆さんはぜひ、そういうのもおすすめです」

「あとあと~……え? くづ、るぎ? くとりぎ? なんか言いました? 何も言ってない? え~、そういうビビらせされるとぴえんなんですけどぉ(笑) 今日は観光地ロケで来てるんですからぁ」

「……あれ? ねえ、スタッフさん。あそこに誰かいません? ほら、地元の方でしょうかね。手を振って――え? あ、あぁ……? ……ごめんなさい、今のなしで――」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る