チートで何でもできる?何でもしてやろうじゃないか!

鈴奈リン

第1話 転生とステータス把握

 


『貴方たちは電車の脱線事故により命を落としました』


俺は今、女神を名乗る存在から話を聞いている。

どこまでも真っ白な空間で、周囲には俺と同じく話を聞いている人たちがたくさんいる。

女神の話によると、俺たちは電車の脱線事故により命を落とした。

その際死んだ者たちは本来ならば魂が浄化され再び輪廻の輪に加わるところだったが、とある実験のためにここに呼び出した。

どうやら彼女は自分の管理する他の世界に異世界の魂を投入することによる影響を調べたいらしい。


彼女の管理する世界は地球を含め複数存在し、俺たちが投入される世界はそれらの世界をコピーした世界となる。

異世界行きを断ってもらっても良いがその場合は記憶が消えて地球の輪廻の輪に戻るだけ。

承諾すればスキルを与えられ、コピーされた世界とはいえ異世界で再び生きることができる。

そう言われてしまったらその場で断る人なんていなかった。


俺たちにはスキルが与えられる。

スキルは『ステータスオープン』と唱えることで確認できる。

その他にも初期装備と初期費用が与えられる。

俺たちは与えられたスキルを用いてその世界で何をしても良いらしい。

今回のためにコピーされた実験用の世界なのでどんな影響を与えても良い。

最悪世界を壊してしまってもそれはそれで構わない、と。


与えられるスキルは完全ランダムであり、有用か有用ではないかなどもランダム。

俺たちは不老不死となり、病気にならないしどんな酷い怪我を負ってもゆっくりとではあるが自然と治癒していく。


選べる世界は複数種類あり、それぞれの世界の詳細が説明されたタブレット端末を配られた。

最初に異世界での新しい名前を記入する項目があったので、少し悩んだけど今までと同じ名前にしておいた。


1つ目、王道の剣と魔法の世界。

過去に魔導文明が著しく発展しており人々は便利な暮らしを送っていたが、世界中が魔法を用いた大規模な戦争を続けていた影響で世界に満ちる魔力が澱み環境が破壊され尽くした。

その結果、後に世界粛清と呼ばれた神の裁きにより世界中の文明が滅んでいる。

その際の生き残りが細々と数を増やして1から文明を発展させていき、今の形に落ち着いている。

1番難易度の低い世界のため追加配布アイテムは無し。


2つ目、空と奈落の世界。

この世界は宇宙と惑星ではなく、無限に続く空と奈落で構成されている。

人々は浮遊島や浮遊大陸で生活しており、魔法の力で稼働する飛行船で島間を行き来している。

ドラゴンが多く生息しており、人々のパートナーとして一緒に育ち生活している。

追加配布アイテムは1人乗りの小型飛行船。


3つ目、海とダンジョンの世界。

大きな陸地というものが存在せず、金属でできた人工島で人々は生活している。

至る場所にダンジョンがあり、人々はそこから資源を得ている。

世界の性質上農作が難しく、野菜や果物や植物が貴重。

追加配布アイテムは1人乗りの小型船。


4つ目、瘴気で満ちた世界。

瘴気から発生する魔物が蔓延っており、人々は結界で覆われたコロニーと呼ばれる場所で縮こまって生活している。

コロニー間の移動も一苦労で、人々は結界を張れる聖女及び聖者を求めて奪い合っている。

追加配布アイテムは小型の携帯結界魔道具。


5つ目、ダンジョンに呑まれて世界中がダンジョン化した世界。

セーフティーエリア以外の全ての場所で魔物が発生し、あらゆる場所でトラップが発動する。

怪我をする確率が高いが、宝箱も定期的に発生するためトレジャーハンターが人気の職業。

地球のあらゆる常識が通用しない。

追加配布アイテムは宝箱感知レーダー。


5つ目は無いな。

死なないとはいえ怪我はしたくない。

4つ目も嫌だ。

コロニー間との移動もままならないのなら長い時間を1つのコロニーの中で過ごすことになる。

3つ目もできれば遠慮したい。

俺は海洋恐怖症なんだ。

2つ目も……微妙だな。

大地が無いっていうのは不安になる。


なら消去法で1つ目の世界しか無いか。

追加配布アイテムとやらは無いみたいだけど背に腹は代えられない。

俺は1つ目の世界を選ぼうとしたけど……1つ目の世界の名前がふっと灰色になって選べなくなってしまった。

えっ?と思い慌てて何度かタップするも選べない。

よく見てみれば、1つ目の世界は右端の数字が一定の数字で止まったまま動いていないのに比べて他の世界は数字が増えていく。

まさかこれ、この世界を選んだ人の数?もしかして人数制限があるのか?

それに右上の数字の数は減っていく。これは時間制限か……。


そうしている間にもどんどん選んだ人の数が増えていく。

慌てた俺は3つ目じゃなければ何でも良いと思い、3つ目を避けててきとうに選択した。

海洋恐怖症なのに周り全部海の世界なんて生きていられる気がしないからだ。

そうして選んだのは……4つ目、瘴気で満ちた世界だった。


それから女神から大まかな説明を受けた。

地球にいた頃の俺たちはもう死んだので、異世界では別の肉体が与えられる。

どんな容姿なのか、どんな種族なのかはその世界に合わせてランダムとなる。

同じ世界を選んでも全員同じ場所に送られるとは限らず、1人だけの場合もあれば複数人まとまる場合もある、など……。


そうして俺たちは異世界へ送られた。




目が覚めると、俺は森の中にいた。

周囲には俺と同じ転生者と思わしき人たちが結構な人数いる。

まずは自分の持ち物を確認することにした。


着ている服はシンプルな布の服の上に、体がすっぽりと隠れるほど長い真っ黒なローブを着ている。

靴はこちらもシンプルな革のブーツだ。

ざらざらした質感で肌触りは良くない。


剣、いわゆるショートソードと呼ばれる物。

長さは80センチぐらいか。

本物の剣なんて初めて見たけど、割と重い。

振り回すのもちょっと苦労しそう。


革の胸当て。

硬くて丈夫そう。

だけど魔物相手にこれで攻撃を防げるのだろうか。

この世界の魔物の強さが分からないからなんとも言えない。


リュックの中身。

革の水袋。

中身はただのぬるい水だ。

革の臭いが移ってしまっていて飲み込むのに抵抗があった。


干し肉が入った袋。

一口かじってみたけどはっきり言って不味い。

日持ちさせるためには仕方ないのかもしれないけど、塩辛過ぎてとても食べられたものじゃない。

下処理も甘いのか獣臭い。

それに硬すぎてあごが痛くなる。


ナイフ。

あまり切れ味の良くなさそうな簡易的な物だ。

しかし切れないというわけでもないので使い道はあるだろうと思う。

戦闘用には使えなさそうだけど。


毛布。

ぺらぺらの薄っぺらい毛布だ。

寝る際に無いよりはマシという程度だろうか。


木の皿と器、フォークとスプーン。

特筆すべきことは無い。


ただの石?と思ったがこれは火打石か。

解した繊維のような物と一緒に袋の中に入っていた。


小さな袋の中には硬貨が数枚。

この辺りで使えるお金だろうな。

あ、紙が一緒に入ってる。

その紙にはそれぞれのお金の価値が書いてあった。


そして異世界には似つかわしくないスマホ。

これについては説明があった。

これは転生者全員に配られるスマホで、異なる世界にいても転生者同士連絡を取り合うことができる。

基本的な通話やメール機能に加えて、掲示板機能だったりアイテム転送機能だったり色々あるみたいだ。


最後に手持ちのついた小さなランタンのような物。

中には火ではなく、仄かに光る結晶のような物が設置されている。

その結晶を中心として、俺1人を内側に覆う程度の膜のような物が展開されていた。

女神の話を思い出す。これが小型の結界魔道具とやらだろうか?

膜の外は微かに紫色の霧のようなものが漂っていた。


初期配布アイテムはこれだけだ。

これからこの世界で生きていくための物資としてはなんとも心もとないけど、無いよりはマシだろう。

それよりも問題はスキルだ。

完全ランダム……有用か有用じゃないかもランダム、個数もランダム。

1つだけの人もいれば5つ付与される人もいる。


1つ、深呼吸した俺はステータスを開いてみた。




名前 :リオ

種族 :人間

レベル:1

魔力 :J


スキル:

【共通語理解】

【特殊技能】




なんというか……シンプルなステータスだな。

それにスキルは2つだけ……か。

魔力のJっていうのは……アルファベットで上から順番だとしたら低すぎるけど、魔力があるってことは夢にまで見た魔法が使えるってことだろ?


種族は『人間』か。

ほっとしたようなちょっと残念なような。

せっかく異世界に転生するのだからエルフとかになれるのかと期待しなかったと言えば嘘になる。

でも種族が違うと色々と問題もありそうだし、人間で良かったのかもしれないな。


気を取り直してスキルに着目する。

【共通語理解】は恐らくそのままの意味でこっちの世界で使われている共通語を理解できるスキルだろう。

【特殊技能】って何だろうか?

ステータスの【特殊技能】の文字をタップしてみると、画面が切り替わった。

 

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