第31話 長毛は化ける。これ常識
じゃあまずは、フェンリルを洗おう! これぞ神の
「じっとしててねー」
まずは38℃くらいのぬるめのお湯をかける。するとやっぱ長毛だったらしく、見た目がめっちゃしぼむ。
「えぇぇぇー!? これフェンリル?」
あまりの化け具合のライがびっくりする。みんなそうなるよね! 私も長毛の子は化けると聞いたけど、ここまで化けるとは思わなかったから!
『……なるほどこれで疲れを癒すのか』
ブルブルブル……
わああぁぁぁー! お湯が周りに飛び散ったー! ひゃっほー!
マギライアはとなりで呆れた顔になっている。その顔を見てフェンリルは念話を飛ばして謝っている様子。周りに人には聞こえないようにもできるんだね。
あ、フェンリルがリラックスし始めた。その様子を見ながら私は犬用シャンプーをプッシュする。
スカッスカッ……
……うっかり切らしてた……まあこんな時は現世ネットで買うのがいいよね!。
テレテテレテン♪
その
つるっ……
段ボールがこちらに来る最中の床にある、お人形を洗おうとしたときに用意しといた石鹸で滑る。……段ボールって滑るんだ……。
クルクルクルクル……
っとー!? 滑った影響で進んでる方向が違うー! だれかー! っと焦っていると、
スーーーーーーーー
氷無しスケートし始めた……。足ないのに……。って、おいぃぃ! しっかり配達してー! ……(諦め)あー……もう普通に自分でとるわ。
スケートする段ボールを追いかけて、捕まえる。こっちの方が早いの、なぁぜなぁぜ? 過去、
段ボールをデリートで消してシャンプーを取り出す。頼んだ数は合計10本。コーギー17匹に
手の中で少し泡立てる。その後にしっかり水がしみ込んだ毛を使ってさらに泡立てる。もっこもこに仕上がったなー。
そして人にシャンプーするのをイメージしながら洗う。
あー、おとなしくしてくれるからめっちゃ楽! 水が苦手な子が逃げようとしたり暴れたりするから洗うの大変って聞いているけど、うちの子たちはみんないい子だなー!
しっかり尻尾や顔も洗ったら泡が真っ黒になっていた。どんだけ汚れていたのー⁉っていうかあの白い毛で汚れていた状態だったんか⁉ 疑問を頭の中にしまいながら真っ黒の泡を洗い流す。全長1.5mくらいの体だから30分かかっちゃったよー。
「よし、これで体洗い流したからもう温泉入っていいよー」
『もうよいのか』
フェンリルが若干速足で一番近い炭酸泉に向かう。
トプン……
いい子でゆっくり入る。またブルブルが発動するかと横でマギライアが身構えてた。さすがに発動しなかった。
「湯加減はどう?」
私はフェンリルに湯加減を聞く。「熱い」って返事が返ってきたら水風呂から水を少し入れるけど、
『うむ、いい湯だ』
ご満足のご様子。フェンリルは若干笑っている顔をこちらに向けるとじっくり炭酸泉の温もりとシュワシュワ感を堪能し始めた。
「キュゥゥ?」
「自分は?」と、言うかのようにフェニックスが飛んでくる。え? 水大丈夫なの? 大丈夫ならいいけど……。
「水大丈夫?」
「キィィィ!」
「大丈夫!」らしい。……まあ、深く考えない方がいっか! ……といっても、鳥ってどうやって洗えばいいの?
「キュルー」
『主、「泡がほしい」といっておる』
なるほど、フェンリルの念話便利だな! そのうち覚えられるといいけど。
とりあえず何に使うかわからない泡を作る。私のあんま誇れない特技の中で一番使わないだろうと思っている特技が「泡立て」だったんだよね……。今は銭湯を開いていたり、コーギー達を洗っていたりするからめっちゃ使うけど!
角が立つくらいの硬さになったので、フェニックスにあげる。すると器用に翼を使い、洗い始めた。……どんだけ~! 翼の付け根部分意外と柔らかいね! 結構ストレッチと化してるのかな? 鳥だけど。
「キュルル♪」
私が驚いている様子を気に留めずに、フェニックスは体中に泡を塗っていきあとは頭だけの状況になっていた。と思ったらまたもや翼を器用に使って頭も洗った……。
あとはもう洗い流すだけなので、シャワーを用意する。お湯をかける合図をして、思いっきりかける。と、しっかり洗ってあるけど、あんまり目立った汚れはない。汚れが炎で燃えてたのかな?
流し終わると、フェンリルと同じように炭酸泉に入ってった。入ったときに翼を整えようとしていたので周りにバシャバシャ水が飛んだ。
『おい! あまり湯を飛ばすでない!』
「キュピー……」
「わざとじゃないよ……」というような鳴き方でフェンリルに訴えているフェニックスを横目に、風呂場を離れることを伝えた。急いで銭湯を開く準備をしないとね!
ライには銭湯の全カ所にクリーンをかけてもらう。その間に私は所々に落ちているコーギーを回収。そのままコーギー達にはモンスター専用部屋と化したルーちゃんの部屋で待機するように伝える。ちなみにこの部屋は扉から入ってすぐ近くだ。
温度確認とかにあまり時間がないので、自分だけの
解除!
一気に終わった……危なかったかも……。
ほっとしていると、お人形が浮遊して近寄ってくる。
「ねえ! たくさんの人が来ているよ! どうしよう」
あ……そっか、そういえばこの子が今日会ってばかりだけど若干人間不信だってことがうかがえたし、どうしようか……。……よし、
「これからコーギー達と遊んでいてくれる? その間、たくさん人が来ると思うけど、みんな優しい人だから安心してね」
今さっと思いついたのがこれしかないんだけど……。
「本当? 信じていい?」
しっかり予想していた回答が来た。なので即答。
「大丈夫! みんなここの常連さんだから」
お人形がきょとんとしている間に、開店時刻になる。入場口の鍵をかけて外を見ると、20人の行列ができていた。もちろんこの中にイアさんもいる。というか、これ接待しきれるかな?
そんな疑問を感じつつ、「お待たせいたしましたー! いまから銭湯開店しまーす!」 という。
入場口から離れると一斉に人の波がくる。忙しい時間の幕開けだー! がんばるぞー!
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