第6話 エルフの美少女

 腐肉病の患者の正体はエルフの美少女だった。

 スレンダーな身体に長い金髪に碧の瞳。

 年の頃は私と同い年ぐらいか。

 こんな美少女があんな醜い肉の塊だった等とは信じられない程の存在が目の前に居た。

 それも裸で。

「身体が…治ってる」

「どうやらちゃんと治す事が出来た様だね」

「…有り難う御座います」

「身体の具合はどうですか?」

「今のところは特に不備は感じないわ」

「それは良かった、そうだ、名前を聞いても良いかな?」

「名前…一度は死んだも同然のこの身、貴方に新しく名前が欲しいわ」

「これはまた急な要請だね。

 でも、あんな状態だったんだ。

 元の生活は望めないか」

「えー、だから新しく名前を貰いたいの」

「そうだね。

 君の名前はアルファ、なんてどうだい?」

「アルファ。それが私の新しい名前。

 貴方の名前は?」

「私の名前はゲヴァイト・ヴァクストゥム。

 この辺りの領地を治めている男爵家の嫡男になるよ」

「貴方貴族だったの?」

「貴族の嫡男がこんな事をしているのが不思議かい?」

「えぇ」

「ま、個人的な趣味が講じて君を助ける事になった、と、思ってくれ」

「そう…

 ねえ、そんな酔狂な貴方に話したい事があるのだけれど良いかしら?」

「改まってなんだい?」

「私が何故檻の中に入れられてあんな所にいたのかと言う事」

「それは、興味が無いと言ったら嘘になるね」

「ありがどう、興味を持ってくれて。

 まずは、そうね、事の始まりは私が悪魔憑き…腐肉病になったところから始まるわ。

 出自はもう死んだような身だから伏せさせて貰うけど、これでもそこそこ裕福な家の出なのよ。

 だから、当初は何とかして腐肉病を治そうと家族はしてくれたわ。

 でも、それは叶わなかった。

 そして、私はある組織に譲られることになったの。

 その組織の名前は、テトラグラマトン教団」

「テトラグラマトン教団?

 物語に出てくる悪役の組織の名前じゃないか」

「えぇそうよ。

 でも、檻の中で聞いた話では、私はそのテトラグラマトン教団に連れて行かれるところだった様なの」

「なる程。

 腐肉病患者を集める謎の組織、テトラグラマトン教団か。

 まさか、物語で語られる様な悪役の組織が実際に存在しているという話しを聞くことになろうとはね」

「信じて貰えないと言う事は理解出来るわ。

 実際問題、この話しを聞いたのはかなり腐肉病が進行してしまっていた頃の話しだし。

 私自身、自分の記憶が何処まで正しいのかどうかさえ怪しいと思っているもの」

「ふむ、ということであれば、一緒に色々と調べてみるかい?」

「良いのかしら?

 自分で言うのも何だけれども、雲を掴む様な話しよ」

「なに、気にしなくて良いさ。

 私は最強を目指して活動している酔狂な男。

 そんな男が謎の組織に立ち向かうなんて、ワクワクするじゃないか」

「貴方、変っているわね」

「だからこそ、君を助けられたんだ。

 今はそれでいいじゃない?」

「!?

 それもそうね」

「とはいえ、まずは力を蓄えるところから始めないとね。

 君も今後活動する事を考えると、何処まで動けるか見てみたいし。

 私自身の鍛錬も続けたい」

「解ったわ、当面の間はその方針で行きましょう。

 これからよろしく御願いね。

 私の救世主様」

「此方こそよろしく。

 しかし、救世主様か」

「あら、嫌だったかしら?

 治す事が不可能と言われていた腐肉病を治してくれた恩人に対しての言葉よ?」

「なる程、では有り難く受け入れさせて貰うよ

 でも、その前に君が着る為の服を用意してくるよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る