宮崎の夏の午後、営業終了後の誰もいない遊園地のように静かに、切なく。

定期的に主人公の綾子が会いに行くのは、入院中の夏希。

夏希の無頓着さが好きで嫌い、特別扱いしたくない、一緒に卒業したい、秘密を知られたくない。
綾子が夏希の携帯で見た「は」の予測変換候補で先頭に表示された言葉には、彼女の秘密が。
二人は秘密をひとつずつ、持っているのです。

天使の存在を身近に感じる病院で、夏希は点滴を繰り返すたびにきれいになっていく。
もしも天使がいるなら――

綾子の震える心が見事に表現されていて、美しい描写が読み手に場の空気感までありありと想像させます。
その空気の中には、二人のもつ秘密の濃密さや、病院内に漂う「生」と「死」両方が含まれています。

一緒に卒業できたら、綾子が天使の存在を意識することはなくなるのでしょう。
いつか本当のパジャマパーティーを開くことができたら、もう営業終了後の遊園地のような静寂などは感じなくなるのでしょう。
その時、秘密はどうなっているのでしょう。

読了後にも様々なことを想像させてくれる、大好きな作品です。