谷崎くんちのほのぼの毎日

みこと。

第1話 早く探せ

「どうだ、あったか?」


 焦り声に促され、否応いやおうにも緊張が高まる。


「いや、まだだ」

「早く探せ。持たないぞ」


 わかってる。状況が非常にマズイことは、その顔色を見たら分かるよ。


「くそっ、なんでないんだよ」

「あるはずだ。ないなんてこと、あり得ない」


 こんなに大きなモールなんだ。

 いや、今は広すぎるせいで困ってるけど。

 始めて来た場所は、これだから……。


「大体お前のせいだぞ。お前が自分で片付けられないから」

「わかってる。申し訳ないって思ってるよ」


 だからこうして必死で探してる。


「せめて店内の見取りマップでもあれば……」


 つぶやく友人の方を見た、僕の目に入ってきたのは。


「あっ! おい、見つけた、あれ!!」


 あのマークは。

 探し求めていた男女の図ピクトグラム

 天井に表示された矢印の先に――、トイレがある!!

 

「!! 行ってくる」


 言うなり、友人は走り出した。


「おう! 健闘を祈る!」


 その背に声を掛けつつ、僕は反省する。


 ごめん、ホントごめん。

 噂のかき氷がまさかあんな化け物サイズだなんて思ってなかったんだ。

 食べて貰って、悪かった。


 迷惑かけるつもりは、なかったんだけどなぁ。



       ― おわり ―

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る