第4話 死のラブレターその2

「君はいいなぁ、女の子にもてて。」


「まだ、言ってんのか? 大体オレは持てたことねぇ。 こんなのもこれが初めてだ。」


「でも、亜木さんと、付き合ってるじゃん!!」


福澤は、腹を立てて手をブンブンと振り回しながら、怖くもない怒り方を必死でしてくる。 オレはそれに対して、鼻で笑いながら、弁明した。


「亜木 キサロのことか? あれはただの幼馴染みたいなもんさ。」



そう言いながら、俺達は二階の自分たちの教室に向かうために、階段を登っていた。


すると階段の前で、ずっと、俺達を待っていた女に出くわした。

 

亜木 キサロだ。

 

俺達のクラスメイトで密かに男子の、話題に上がるくらいの人気があるが、女子生徒の友達はそんなにいないらしい。


 小柄で銀髪、そして鋭い目で無口その透明感のある見てくれと、特徴は面妖な雰囲気を隠せていない異様を醸し出しているが、きっとそれがコイツに友達がいない原因だろう。

 

オレはコイツと一緒にいる時が多い、そのせいでそんな関係ではないのだが、どうやらオレと彼女は、付き合っていると思われているらしい。



「ソウスケ、お弁当…忘れてる。」 


キサロはそう呟いて、大きめの木製お弁当箱を手渡してきた。


「あぁサンキューな…あとビー玉は?」


「鞄に入れといた。」


「やっぱ付き合ってるじゃん!!」


オレがキサロと話していると、涙目になりながら、福澤が迫ってきた。どうやら相当ご立腹らしい。


「じゃあ、また…。」


ソレを察したのか、キサロはそう言い残し、階段先の廊下へ去っていった。 取り残されたオレは、手をグルグルと回しながら、ポカポカ殴ってくる福澤の攻撃を受け続けた。


「弁当、忘れたってなに? もしかして一緒に住んでるの? なんて破廉恥な!!」



 「破廉恥じゃね〜よ…しつけえ〜な。だいたい…俺も人のこと言えねーけどよ…『あの、時のアレ!! 破り捨てたやつ!!』お前もあんなことしてたら…そりゃモテねーよ。」


「だって気持ち悪かったんだもん」


「俺もアレはそう思ったけどさぁ…まぁお前が失くした記憶の時はもててたぞ…。」


「嘘!! もうそんな都合のいいことばっかり!!」


福澤は、記憶を喪失している。 理由は1年前起こった、『2025年日本七代怪現象』その3つ目に起こった。第三光の怪。『静岡光現象』


全ての記憶を消失しているわけではない。事件が起こった、1年前から8年前までの記憶のみをなくしている。


その事件で記憶を失ったのは福澤だけではない、ここ日本では推定5万人の記憶喪失者が同様に発見されている。 その五万人には、症状と発症日、そして国籍以外に共通点はなく、規則性、原因、当然治療法も不明のままだ。


まぁもっとも、それは世間、一般社会の話なのだが。




とはいえ、この記憶喪失には、不可解な点はまだある。 その症状はまるで8年間の記憶を、全てすっぽり抜け落ちているようだが、それだけではない、どうやら体験の記憶のみを喪失その間に経験として脳に蓄積された、知識は不規則だが覚えている。


 例えば福澤の場合、オレと交友関係にあったことは覚えているのに、自分の家族構成は覚えていなかったり、あとは信号の色なども覚えていないため、記憶を失って半年は危ない目に合うため、目が離せなかった。 まぁコイツの場合は、今でも別の理由で目が離せないのだが…。


 そうこう会話していると、オレたちは自分たちの教室『1年A組』のある廊下にたどり着いた。 奇妙な作りだが、この菜御矢市立喜多見中学校なごやしりつきたみちゅうがっこうの校舎は4階建てで、何故か一年の教室が中途半端な2階にある、因みに二年は1階、三年は3階だ。


 オレたちの教室はそんな二階の廊下の階段側から最も離れた奥にある。オレたちは階段を上がった先のその廊下を曲がろうとしたその時だった、そこそこの人混みの中でオレはある女子生徒の姿が目に入った。 


石崎駿観それはオレたちもよく知っている、女子生徒の一人だ。


7大厄災の原因か、今、この日本では、かなり個性的な髪色に、変色した人間が多いのだが彼女の髪色はオレと黒い、いや…僅かに感じる違和感から推測するにそれは、オレと違いおそらくは、染められたものだろうな。


 彼女はそんな前髪を目が隠れるほど伸ばしていた。


 加えて彼女は、なんとも奇天烈なことに

顔に大きなフチで前髪と全くの同色のメガネをしていた。 いったいその髪の毛で隠れて見えない目で、何を見るのかというツッコミは彼女の面を見るたび、オレは心のなかで嘲笑と疑問として湧き上がってくる。

 

 余にも地味だ。 


 華には興味を示さないのか、ただ単にセンスがないのか。


人のこといえるファションセンスではないことは自覚しているが、それでも、こいつはどうなの?ってくらいだ。


「おい、噂をすれば…いたぞ」


 オレはその女子生徒を指さして、その存在を福澤に伝えた。


 すると福澤は普段のまさに無垢といった笑顔の表情を顔から消し、代わりに苦虫を噛み潰したような顔をした。


 わかるよ…オレだって、まぁこの女ことは、そのキテレツな格好、そしてそれよりもその行動がキショいと感じる。


なんてったって彼女はこの前、オレと福澤がくっつく漫画を執筆した。


 そういった妄想をするのは、自由だが、俺達本人にバレないようやるってのが暗黙だろう。こいつの場合はソレを普通にクラスメイトに公開した狂人だ。


 確かタイトルは美男×美少女男だったけか。そんな感じ


ソレをこいつは、完成したと同時に、どうやら、クラスの腐女子仲間に回していたらしい。 全く…そういうのは、俺達本人がいないとこでやってほしい。




 

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