ルソでの日々(3)


「いってぇ…」



 案の定というべきか。あの後もデールに挑み続けた式隆だったが、スタミナが尽きてそれはもうボッコボコにされた。



「結局一番肉薄できたのは直前のあの時だったなぁ」



 訓練を続けてきて随分と勘も取り戻し、対人戦闘ならそこそこのレベルに仕上がってきている。しかしその結果、より一層際立つことになった懸念点が一つ。


 それは「あくまで対人」ということである。

 この世界の人類の歴史は長い。おまけに魔力というエネルギーもある。しかし、この世界の文明の発達はせいぜい19世紀後半といったところだ。



 なぜか?



 それはこの世界における最上位の生命体が人間ではないからである。


 生態系の成り立ちは分からないが、この世界の野生生物は現行の人類では及ばない存在も多くいる。


 現状、式隆はそれらに対抗する手段を持っていない。


 「今やるべきこと」に魔法を組み込んでいるのもこれが理由である。

 無論出会わないように立ち回るつもりではあるが、万が一ということもある。



(また『謎パワー』でどうにかなるとも思わんし、やっぱ魔法に関しては急務だな)



 と、そこまで考えて式隆はとんでもない事実を失念していたことに気付く。



「金!!!忘れてたァ!!??」



 そう、資金である。ルソを離れてダステールに向かうだけでも相応の路銀がかかる。


 一応街で万屋よろずやっぽい活動をしつつ人々と交流を深めてはいたが、それはあくまで情報を集めるためだ。


 お代をくれる人も多くいたが、金稼ぎが目的ではなかったため最低限しかもらっていないのである。



「うおぉぉぉ!バイトぉぉぉぉ!!」



 ギリギリまでルソに残ってもあと1週間とちょっとしかない。


 式隆はその残った期間を血眼になって働く金の亡者として過ごすこととなった。

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