肉屋のオッサン危機一髪 3つの大冒険

兵藤晴佳

第1話 あのオッサンは伝説の勇者


 おいコラ、そこのガキんちょども!

 ちょっと来い。

 ちょっとこっち来て座れ。

 お前ら、今、何しようとした?

 石投げようとしたな? あのオッサンに。

 え? 何だって? あんな火傷の跡のある、気味の悪い奴には石投げたっていい? 

 誰だ! そんなこと吐かしやがったのは……。

 大人はみんなそう言ってる?

 ふてえ連中だな、親が親なら子どもも子どもだよ。

 しょうがねえ、俺から見りゃ、お前らのオヤジさんやオフクロさんだってまだまだ坊ちゃん嬢ちゃんだからな。

 大きな戦が終わって、ちょっと経ったら、どいつもこいつもこのザマだ。

 大変だったんだそ、ここいらへんは国境に近いから。

 戦に勝った負けたで兵隊が出たり入ったりするたびにものを持ってく。

 王様の位を取り合って、若い王子が相手を追い出す追い出さないで戦をする。

 ひどいときには3つの国の王様が、直々に兵隊を連れてきて……。

 しかし子供ってのはタチが悪いや、どんなたいへんなことでも偉い人でも、知らないってだけでないこと、いないことにしちゃうんだからな。

 え? じゃあ、村の端っこの小屋に住んでる、働かないあのオッサンは誰かって?

 知らんのか、放浪の勇者、人呼んで肉屋のバドシール!

 ……知らんだろうなあ、お前らのオヤジさんやオフクロさんだって知らないんだから。

 何? 勇者なら、モンスター退治をしてるはずだって? 

 おお、じゃあ、聞かせてやろうか。

「肉屋のバドシール危機一髪、3つの冒険」を……。

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