守備力ゼロの阻喪勇者

ゆきのふるひ

第1話 記憶に残る違和感

守りたかった………


守りたかった守りたかった守りたかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった

守れなかった守れなかった守れなかった


「……っは!」


「あれ〜もう起きたの?ゼロにしちゃはやいね〜」


「なんで泣いてるの?嫌な夢見てた?」


「・・・いや、これはちがっ・・・」


ゼロの泣きっ面なんて気にしないで、2人の腕が優しくゼロを包みこんだ。目から余計に涙が溢れてくる。


「あれ、俺なんで泣いてるんだ・・・?」


「心当たりは?」


「・・・・・・無い」


「そっか。でもいつか、きっと思い出せるよ!」


「うぅ・・・ありがと」


なんだかとても長い夢を見ていた気がする。長くて儚い夢。そのこともいつか忘れていってしまいそうになるような。


俺は仲間を、この2人を『守る』。それだけだ。それだけでいいんだ。この唯一の願いを叶えれるなら。


旅に出る前は不服だった。でも結局自分の意見を言えないまま2人の意見に賛同し、この旅に出ることになった。後悔はしていない。これまでずっと楽しかったから。でも何か嫌な予感がしたんだ。先の夢も。


「ゼロ〜ご飯食べよ〜」


「うん!すぐ行くよ!」


「私も先行ってるね!」






「じゃあ出発しますか!」


「「おーーーーー!!」」


やっぱりおかしい。朝から少し頭が痛い。夢のことと関係があるのだろうか。この程度なら探検に支障はでないと思うが・・・


「ねぇゼロ?どうしたの?ぼーっとして」


「あ、あぁ。少し頭痛がするだけだよ」


「大丈夫?少し止まってね。・・・ヒール」


ゼロの頭にクロバの手が触れて、淡い光を放った。


「うーん、あまり変わらないなー・・・多分感情的なものだと思うんだ。治癒魔法じゃ治らないよ」


「そっかぁ・・・役に立てなくてごめんね?」


「ううん。ありがとうクロバ」


「ちょっと〜、2人だけでイチャイチャしないで〜?」


「い、イチャイチャだなんて!アキレアったらなんて勘違いするの!?ね!!ゼロ!」


「そ、そうだね」


クロバの顔は赤面し、動揺が激しい。激しすぎる。


いつものことだけど、こういうとこが・・・なんてな。


「ゼロ〜、クロバ〜少し真剣に行こ〜か」


辺りは樹木に包まれた森の中だ。どこから襲われるかもわからないからアキレアにサーチを発動してもらっていた。アキレアが真剣になったってことはサーチに何か引っかかったんだ。


「ああ、わかった」


「うん!任せて!!アキレア、方角は?」


「ウッズボアだねぇ。東方面に5匹、西方面に6匹。こっちにはでかいのがいるよ〜」


「りょーかい!!ゼロは西をお願い!」


「任せろ。アキレアは援護を頼む。森を焼かないようにな」


ゼロは微笑を浮かべ、茂みの奥に消えて行った。同時にクロバも。アキレアは千里眼で援護のタイミングを伺う。完璧な連携だ。


「おりゃっ!ふっ!・・・まずは一体」


剣による斬撃と強烈な蹴りで主を撃破。


「・・・ライトニング・ブレード」


ゼロの剣が白金色の輝きを放つ。ウッズボアは薄暗い森の中で過ごしている。この光を直視すれば勝算は0だ。


これは、ゼロが得意とする付与魔法だ。剣にそれぞれの属性を付与し、相手にデバフを与えたりその属性の利点を活かすことができる。ほんのそこらの魔術士じゃ、到底真似できる技じゃない。上級魔術士であって、やっと使える者がいる。さすが勇者の所業である。


「・・・さて、あっちの援護を・・・」


「ゼローーーーー!」


「ブフォッ!クロバー・・・突っ込んでくるのやめてくれよー・・・」


「えへへー、ごめんごめん♪」


「反省の余地0だね・・・」


「ゼロ〜どうだった〜?」


「いつも通りだったね」


「やっぱり強いね!ゼロは」


「そっちは?」


「クロバが全部片付けたよ〜。私いらなかったねぇ・・・」


「サーチがなかったら分からなかったよ。クロバもアキレアもありがと」






闇に包まれた夜の森。その真ん中に焚き火の灯りとパチパチと心身和らぐ音が響く。


「明日はどこ行くの?ゼロ」


「うーん。とりあえず森は出たいな。森を抜けたら小さな町があるんだ。そこを目指そうと思う。アキレア、案内をお願いしていいか?」


「うん〜大丈夫だよ〜」


「ありがと」


「ねえゼロ・・・」


「うん?」


「・・・温泉とかってあったりするのかな・・・」


「なかったらまた川だもんな。あはは・・・」


「もーあんなに寒いのいやー!!」


「私も〜」


季節は雪の降り出す時期だ。氷も張るような川に入ってたら風邪を引いてしまうかもしれない。


「次はどうにかするよ」


「さっすがゼロ!!」


「まあ、とりあえず森を抜けようか!」


「「うん!!」」

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