第2話 初めての合体
階段を駆け上がって最上階まで着いた
「開いてないじゃん」
「マンガじゃないんだから、屋上は普通開放されてないんだよ」
「……ビビちゃん、よろしく」
そういうと
「これ何? てかアンタ何なんだよ!?」
「いいから……
モタモタする涼馬に苛ついて、火憐はその剛力で無理矢理腕掴んでササっと腕時計をつけてあげた。
「アグレッサー? アンタの言うことはずっと意味不明なんだよ!」
「もう! ……なんで呼びかけたヤツがアンチボディのこと忘れてんの? ありえないんだけど」
ビビちゃんは火憐の頭から飛び降りて振り回した尻尾でドアノブを破壊した。
ドヤ顔で着地すると、火憐は嬉しそうにビビちゃんを抱えてまた頭に乗せた。
「よぉーし、開いたな」
「開いたな、じゃねぇ! 今の何!?」
鍵部分が無残に破壊された扉を押し開けて屋上に出る。
春風に頬を撫でられながら、火憐はスマホを取り出して誰かに電話かけた。
完全に置いてかれてる涼馬は呆れてビビちゃんを睨むことしかできない。
「ねぇ、ギャラクシーくんを確保したんだけど。追ってきてるアグレッサー今どこに────」
通話中にも関わらず、ビビちゃんは突然火憐の頭を足台に飛び上がった。
驚いた火憐と涼馬が目線でそれを追うと、飛んだビビちゃんは先ほどドアノブを破壊したように、遥か上空から発射されたビーム砲を尻尾で弾いてみせた。
「ナイス、ビビちゃん!」
「なっ……ッ!?」
弾かれたビーム砲は校舎すぐ横のグラウンドに直撃して爆発する。
凄まじい轟音と爆風に襲われて、グラウンドに面した教室の窓ガラスが全部割れてしまう。
校舎に居た生徒や教師たちの悲鳴は屋上にまで伝わる。
「いまのな──」
火憐に説明を求めようと横に向いた瞬間、ビーム砲を撃った張本人のアグレッサーが急速で下降して火憐を掴んで再び上昇し始める。
涼馬は両目を細めて上空に居る二人の姿を捉える。
「あいつを掴んでるの……機械、サイボーグ!?」
火憐を掴んでいる物体は人型の機械生命体。
上昇しながら顔面を火憐に向けた円錐形に変形して、すかさず電気らしきエネルギーをチャージし始めた。
「ちょっと、女子の顔にビーム撃つ気!?」
火憐は力入れて自分をロックする機械の腕こじ開けると、機械型アグレッサーの首を掴んだままその左腕を引きちぎった。
抵抗する隙も与えずにアグレッサーを振り回して地上に叩きつける。3秒ほど遅れて火憐もアグレッサー近くのグラウンドに着地して、ビーム砲の爆発に負けないぐらいの土埃と衝突音を起こした。
「……化け物だ……」
「にゃぁっ!」
屋上でこの一連の戦いを目撃した涼馬は腰が抜けて転んでしまうが、ビビちゃんはそんな様子を微塵も気にすることなく涼馬を屋上から叩き落す。
常人なら落下死するような高さなのだが、涼馬は何の問題もなく普通に着地できた。
「手伝いに行けってのか……」
戻ってもきっとまたデブ猫に叩き落とされる、それなら彼女の手伝いをした方が良いかもしれない。
そう決意して火憐のそばまで駆け寄るも、腕を引きちぎられたアグレッサーは青い稲妻を放ちながら腕を再生させている。
「さっきのあれで死んでないのか、あれ……えっと、アグレッサー?」
「あれぐらいで死ぬんだったらSOS信号を辿らなかったよ……ほら、やるよ」
舞っていた土埃は飛び散って、三者を隠すベールが剥がれていく。
このままだと教室の窓から見ている野次馬たちに顔を見られてしまう。
「さっき渡したフュージョン・リング、起動して」
「ふゅー……なに?」
「フュージョン・リング!」
フュージョンリングと呼ばれる腕時計の帯中央を沿うように付けられた引き金がある。それを引き抜くとリングは青く光り出した。
火憐は涼馬に続けて、首のチョーカーに扮したフュージョンリングの引き金を引いてみせた。
「合体するよ!」
「え、がった──」
「デュアル、フュージョンッ!! ファイアスクリュー!」
涼馬の右腕のリングから溢れる光に包まれて、人だった肌は消え失せて全身で宇宙を内包したかのような星空の肌に変わる。
隣に立っていた火憐は涼馬と重ねるように吸い込まれると、星空の肌状態の涼馬は全身から発火して炎の異形と化した。
「……燃えてるのに、熱くない? これが合体……?」
質問に返答する彼女の声が頭の中で反響する。
『そう、私のアンチボディとしての力────見せてあげるッ!!』
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