人に価値が与えられる学園で~ここから始める反逆と逆襲~

つきのわ

第0話 プロローグ 全てを奪われた日の記憶

 新生歴2022年――圧倒的な軍事力を有する絶対王政国家パンゲアは世界に対して宣戦布告。


 パンゲア大帝の掲げる理念。

 力ある者に統治されてこそ、弱者は価値を生み出す。

 弱者として支配を受け入れたくないならば、価値を見せてみよ。

 この戦いは弱者淘汰ではなく、進化の為の救済なのだと。


 これに対して各国家は猛反発をするも、パンゲアの国家侵略は止まることはなく――驚くべき速度で多くの国が飲み込まれていった。


 力がなければ蹂躙される。

 人が人を、国が国を飲み込んでいく。

 それは俺も、俺の生まれ育った国――日本も同じだった。


 新生歴2023年――日本の生み出した魔術と科学を融合させたハイブリットエネルギー『魔技科マギカ』を求め、パンゲアは日本に宣戦布告した。


 東洋の島国でありながら、世界でも最上位と言えるほどの強力な魔術師と、最先端の科学技術を持った日本は超大国相手に善戦するも、資源の枯渇により厳しい状況が続き……。


 そして――俺にとって最悪の時が訪れる。


「あぁ……ああぁ……」


 力のなかった俺は、全てを失った。

 俺を助ける為に、父と母は身代わりになった。

 姉も、妹も、友も、俺が守らなければならなかった主君さえ――もう、どこにもいない。


「うああああああああああああああああっ――」


 戦火に包まれた生まれ故郷を目にしながら、ただ泣き叫ぶことしかできなかった。

 孤独感と無力感に苛まれ、自身に対する怒りの感情が溢れてくる。

 だが、それでも……


(……俺は、生きなくちゃならない)


 絶望に負け、楽になる為に死を選ぶことなんてできるわけがない。

 皆の想いを背負っているのだから。


(……失われた命は戻らない。それでも俺は、絶対にこの国を取り戻す!)


 消えぬことのない決意を胸に刻む。

 忘れることのできない記憶と共に。

 そして新生歴2024年――日本は超大国パンゲアの領土となり、その名が世界から消えることになる。


 第二十三パンゲア領――それが今の日本の名だ。

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