オデ、日常回、ワカラナイ。

カクヨムやなろうのようなWeb連載小説だと、日常回というのがお決まりの存在になっている。


アニメなどにも前半と後半の間にあったり、時々挟まったりするよね。


特に大事件が起きるわけでもなく、メインストーリーが大幅に進むでもなく、ただキャラ同士が日常を送る回みたいなの。


Twitterに更新通知を出すときにも、「今回は日常回です」と書かれているのを結構見るよ。


まず、日常回は必要か不要かについての話を――要るだろ!


シリアス一辺倒じゃ、疲れるだろ!


聞いているのか! 僕よ!


僕が現在連載中の某ファンタジー小説には、現在投稿範囲では日常回らしい日常回はない。


まあ、一話をかなり細切れにして投稿してるから、投稿回単位だと日常に近い回はあるのかもしれないけど。


ただ、記載している話数単位で見ると日常回はない。10万文字くらい投稿してるのにね。


現在執筆中なのは、第五章。文字数はすでに50万文字を超えている。


三章からは、章終わりに番外編という形でちょっとした日常回を挟んでいるけど、本編にそれらしい回は五章になるまでない。


逆に、五章は日常編。クソデカ日常回だ。


おい、シリアス一辺倒じゃ疲れると言ったのは誰だ! 僕だ!


しかし、これには一応理由がある。



メタ的理由と、物語的な理由。



物語を作るときは、この二種類の理由が大事だと思う。


メタ的理由で言えば、番外編という形で挟むほうが読みやすかったということ。


全体的なストーリーの流れがありつつ、各章ごとに独立した事件が起きるから、その事件が終わった後のほうがサッパリとした気持ちで日常回を楽しめる。楽しむのに、ノイズが無い。


ノイズというのは、「こいつら遊んでるけど事件はこうしている間にも進行してるんだよなあ」みたいな感じのあれ。



五章全体が日常回なのは、メタ的理由で言えば、ちょっとした要素の回収と前半にばら撒いた布石の回収、後半に向けての布石のばら撒きなどだ。


だから日常編と銘打ちつつも、結構シリアスしているシーンもある。メイン要素も普通にある。



本編中に日常回が全然ない物語的な理由は、「日常やってる場合じゃない」ということだ。


たとえば、「敵の思惑が進行して世界がまずい!」というときに、海に行って水着にはならないよね。


「3日以内に敵を倒さないと街が滅ぶ!」というときに、ショッピングしないよね。


メインストーリー以外で日付の経過がないゲームだと緊迫した状況でサブイベントこなしがちだけど、小説はそういうわけにはいかない。


だから、日常回を挟むのには「タイミング」が重要になる。


メタ的な理由からくるタイミングと、物語的な理由からくるタイミング。


この二つがいい感じにがっちゃんこ! と合わさったタイミングでの日常回が、個人的には一番望ましいと思う。



だけど! それが! 一番! 難しい!



物語的な理由を日常回に作るときに楽なのは、「主人公たちに何かがあった後」だ。


たとえば、「辛いことがあって落ち込んでいる」とか「主人公が乗る機体が大破してしまった」とか。


前者の場合、落ち込んでいて戦いどころじゃない、事件に立ち向かう勇気が出ないなどなどの理由を作りやすい。それで仲間が気を遣って「ちょっと休もう」と提案すれば、日常回の導入になる。


同時に、凹んだ状態から立ち直るというメインの展開にもなる。


後者のような「物理的な理由で戦えない状態になった場合」は、それ自体が日常を送る理由になる。


そして、「壊れた機体がパワーアップして復活」とか「二号機が見つかる」とか、メインの展開にも繋げやすい。



じゃあ、主人公が完全無欠チート野郎の場合はどうか。


こういう「マイナス状態を導入にする理由付け」は、ちょっとしにくくなる。


完全無欠チート野郎が主人公の物語を読む層は、そういう挫折イベントやストレスがかかる展開が苦手な人が多い。


この場合、「主人公が強すぎて日常を送る余裕がある」というのが物語上の理由付けになりそうだ。


日常を挟むことで、主人公の余裕たっぷりチート加減をより強く演出することもできる。


「こいつら余裕あるな」というノイズが、かえって「まあ強いからな」という納得に繋がるんじゃないかな。


もちろん、主人公が余裕たっぷりの性格じゃないとダメなんだけども。



これだけ語ってきて、日常回ワカラナイと言っているけれども、僕は日常回を書くのが苦手というわけじゃない。


むしろ、ファンタジー小説にはじめて挑んでいる人間としては、戦闘描写よりも日常描写のほうが書きやすいし筆が乗る。


実際に、僕が昔個人出版した電子書籍に対する書評も日常部分のほうが評価が高かった。


ただ、日常回を作るのは神経を使う。


主にプロット段階で。


どこに挟むか、どのように挟むのか。


どのような話にするのか、どのようにメインに絡ませるのか。


文量はどれくらいにするのか。


メインが全く進まない日常回の頻度が高かったり文量が多かったりすると、停滞になってしまう。


色々気を遣いながら作るのが、難しいところなんだよなあ……。



読者にとっては箸休めでも、書く側としてはあまり箸休めにはならないだろうね。


「そろそろ疲れたから日常回でも書くか」と考えている人もいるだろうけど……。


物語上の理由はちゃんと作ってあげてほしいと思う、オタク視点からの話でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る