第9話 群れるしかない人達

かつて僕は「人は人でしか磨かれない」という言葉を大切にしてきた。

今でも良い言葉だと思っている。


でも、会社組織の人間関係の中では僕は「磨かれた」のではなく「擦り減った」だけだった。


チームプレーが嫌いなのではない。

でも集団の中にずっといるのが苦手。


窮屈なのだ。

周囲と同じような言動をすることが。


世の中には友達がたくさんいることが良くて

一人ぼっちは良くないみたいな風潮がある。


「あなたが死んだ時に何人が葬式に来てくれますか?それがあなたの人間力です」とか。


大きなお世話だ。


僕は友達と呼べるのは一人しかいない。

その彼だって年に2~3回の頻度で会ってお互いの近況報告をする程度だ。

別に友達がたくさん欲しいとも思わない。


反対に、一人の時間が多いとその分だけ自分自身に向き合っていられる。


もちろんどちらが良いという話ではない。


ただ、群れていないからといって「寂しい人」という意味ではない。

寂しい人というのは自ら心を閉ざしてしまった人か、誰からも受け入れてもらえない人のことだろう。


人からどう思われているかを気にする人間ほど群れたがる傾向がある。

それが僕のこれまでの社会人経験から得られた考察だ。


群れていないと不安。

他の人と同じことをしていないと不安。

周囲と同じことをすることによって自分を安心させようとする。

そして一人で行動する人間を寂しい人だと決めつける。


サラリーマン社会もそう。


ある時、街中を行き交うサラリーマンの群れがロボットの集団に見えたことがある。


皆、同じような服装をし

皆、同じような表情をしている。


皆、同じような歩き方をし

皆、同じような考え方をする。


皆、同じような反応をし

皆、同じような言動をする。


皆、同じように働くことを是とし

皆、同じように生きることを是とする



気色悪い光景だった。


僕はゆっくりと自分のペースで生きていく方が向いているのだと思う。


なにより低ストレスで毎日を過ごしていけるから。

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