プレバト俳句の添削ノート2024 

滝口アルファ

冬麗戦2024 題・大笑い 冬のタイトル戦を制したのは?

はじめに。

このたびの能登半島地震で被災された方々に、

お見舞い申し上げます。

たまたまタイミングの悪いことに、

今回の俳句のお題が「大笑い」。

不謹慎に思われるかもしれませんが、

俳句のお題に罪はありませんので、

拙文をご覧いただき、

楽しんでいただけたら幸いです。


それでは、本編です。


今回は、

2024年1月11日に放送された、

プレバト俳句の冬のタイトル戦である、

冬麗戦2024を分析してみたいと思います。

お題は「大笑い」。

総勢16名による、

白熱の俳句バトルが繰り広げられました。

なお、テレビで放送された俳句は、第10位以上でした。


さて、

今回、私が気になった俳句は4句。

ひとつずつ順に見ていきたいと思います。


まず、

第10位に選ばれた、

安藤和津さんの俳句を見てみましょう。


妣(はは)の忌や遺言だもの牡蠣フライ


「牡蠣(かき)」が、冬の季語です。

「妣」は、死んだ母のことです。

悪くない俳句だと思いますが、

夏井先生は、次のように添削されました。


母の通夜遺言だもの牡蠣フライ


こうすると、確かに、

少し臨場感が出ているでしょうか。

ですが、もう少し良くなりそうです。

添削例を挙げてみます。


A 母の遺言だもの、みんなで牡蠣フライ

B 母の好物だったよね牡蠣フライ

C 母の好物だったカキフライ喰う


添削例Aでは、上5を7音にしてみました。

添削例B、Cでは、

句跨がりを駆使してみました。

あと、牡蠣フライは、カタカナでもいいかなと思います。


次に、

第9位に選ばれた、

永世名人の千原ジュニアさんの俳句を見てみましょう。


笑ひ声洩るる交番注連飾


「注連飾(しめかざり)」が、新年の季語。

着眼点の面白い、良い俳句です。

ですが、

夏井先生は、

「洩るる」が「大笑い」としては弱いとおっしゃって、

添削例も示さずに下位の9位に選びました。

これは、過小評価と言わざるを得ないでしょう。

私の感覚では、

この俳句は4位か5位くらいが妥当だと思います。

夏井先生が添削を放棄されたので、

仕方なく、

代わりに添削例を考えてみました。


A 笑ひ声ひびく交番注連飾

B 笑ひ声爆(は)ぜる交番注連飾

C 注連飾揺らす交番の笑ひ声


こうすると、

添削例Cは中8ですが、

「笑ひ声」が補強されて、

お題の「大笑い」に近づいたのではないでしょうか。

千原ジュニアさんも納得してくれるといいのですが…。


次に、

第5位に選ばれた、

名人7段の立川志らくさんの俳句を見てみましょう。


福笑いのような祖父の、死に顔


「福笑い」が、新年の季語です。

破調ですが、直喩が鋭い俳句です。

夏井先生は、「よう直しません」とおっしゃっていましたが、

私なりの添削例を挙げてみます。


A 福笑いみたいな祖父の死に顔よ

B 福笑いみたいな祖父の死に顔だ

C 福笑いみたいだ死んだ祖父の顔

D 祖父死んで福笑いみたいな顔だ

E 祖父ちゃんの死に顔まるで福笑い


全て定型に整えてみました。

この句は、

志らくさんの子供時代の記憶らしいので、

そうだとすると、

添削例Eがいちばん合っているのかなと思います。


最後に、

見事、冬麗戦2024で第1位に輝いた、

特待生4級の春風亭昇吉さんの俳句を見てみましょう。

(優勝おめでとうございます!)


一月の笑いの外にひとりいた


「正月」が、新年の季語で、

その傍題に「一月、睦月(むつき)」があります。

さて、

優勝作品は孤独感の鮮やかな一句です。

尾崎放哉(おざきほうさい)の

自由律俳句「咳をしてもひとり」に、

どこか通ずるものを感じます。

もちろん優勝作品ですので、

このままでいいのですが、

いくつか添削例を考えてみました。


A 一月の笑いの外に立っていた

B 一月の笑いの外に空を見た

C 立っていた、一月の笑いの外に

D 空を見た、一月の笑いの外に

E 笑い声ひびく一月ひとり行く

F 笑い声さざめく睦月ひとり行く


「睦月」は、一月の古称です。

下5の「ひとりいた」を少し描写してみたり、

語順を逆にしてみたり、

「笑い」を強調してみたりしました。

原作と比べてみて、

その微妙な違いをお楽しみ下さい。


今回は以上です。














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