キャラメで爆誕する英雄叙事詩(ヒロイック・サーガ)

サイノメ

第1話 キャラクターメイキング

 モニタに映る項目の一つに数値を入力する。

 入力した「10」の数値に連動し合計値のカウントが加算される。

 その表と手元の書籍、タブレットで開いていた解説ブログの3つを改めて見比べる。

 数値に問題なし。再現したいこともこれなら概ね可能。

「よっしゃ完成っと。」

 俺は独り言を呟きながらマウスを操りカーソルを「保存」ボタンに合わせてクリック。

 明日に控えたサークルの定例会で使用するキャラクターが大体完成した。

 俺たちのサークルは趣味のテーブルトークRPGを通じて知り合ったメンバーによるサークルであり、明日は当然TRPGのセッションを楽しむことになっている。

 もっとも、最近はオンライン開催が多く、今回も同様である。

 オンラインなので直接顔をあわせる事が出来ないが、 場所を確保する必要がなく手軽にセッションを組むことができるのが最大の特長だ。

 それに、ネット上では公式もしくは愛好家有志によるプレイヤーキャラクター制作支援ツールが公開されており、これらを使用することでPC作成時が簡単かつ、数値設定の誤りによる再計算の手間が減った。

 明日プレイする「レガリアン戦記」は複数のクラスを組み合わせるマルチクラスタシステムと、スキルや特殊アイテム所持にポイント使用するスキルポイントシステムの2つを使用する比較的複雑なシステムのため、これらのツールはたいへん助かる。

 特に今回の様な高レベルのPCを使ったセッションでは必須と言ってもいい。

 もっともPC作成ツールが有れば誰でもキャラクターが作れるわけではない。

 ツールはあくまでポイント計算やキャラクター管理の手助けになるだけで、実際に必要なデータ類はルールブックや追加サプリメントを手元に用意しておく必要がある。

 レガリアン戦記はサプリメントの種類も10冊を超えるほど豊富である。

 そして中にはぶっ壊れスキルと呼ばれるほど強力なスキルが記載されていることも有る。

 その為、キャラメキャラクターメイキングにおいては、「所持サプリの量こそが力である」などと呼ばれるほどである。

 幸いにしてうちのサークルメンバーは重要サプリである上級ルールを始め、主だった追加ルールやスキルが記載されたサプリを全員が所持している。

 なのでそのあたりは気を使わずにキャラクターを作ることができる。

 特に高レベルのPCを作成では、様々なスキルが取れる関係から個々人の趣味が反映される。

 現に真っ先にセッションのPC事前情報プレイヤーズ・ハンドアウトを選んだタクトは、お気に入りのPCである『廃公子デューク』を持ち込むことを宣言した。

 このデュークはサークル内では比較的知られているPCである。

 元貴族出身の騎士であり、盾役とメインアタッカーを兼ねた能力を持っている。

 そして、デュークは使い続けられてきたPCであるため、それなりにキャラクター設定がしっかりとしており、デュークが登場するとなれば皆それなりに背景設定を決めないと上手く絡められないので、それを考える必要がある。

 もっともサークルメンバーは大学以来の付き合いだが、当時から役者や作家、シナリオライターに漫画家などを目指していた面子であるので、それらの設定を考えることはむしろ大好物といった具合である。

 今回も俺はキャラクターの役回りであるサブアタッカー兼盗賊として必要なスキルは埋めたが、あえてフリー枠のスキルを取れる余裕を残している。

 それはこれから考えるキャラクター設定にあわせて追加でスキルを取るからである。

 さて、準備は整ったのでこれから考えていこう。

 俺の新しい英雄PCである魔剣使いの暗殺者『ルシア』の物語を。

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