第5話
ゲキツヨ三銃士。プロゲーマーでありながらゲーム実況をしているインフルエンサー三人組。二人の前にいるクロウはメンバーの一人だ。
「それじゃあ、始めるよ」
クロウがひとりでに呟く。その横で恭弥と綾人は画面を注視する。
彼女の提案で一緒にプレイすることとなった。なぜ彼女が自分たちを誘ったのかは分からないが、プロが相手になってくれると言うのなら乗らない手はない。
いずれ戦う相手の手の内を今から知ることができるのだ。こんなチャンスを見逃せないと恭弥は考えた。だが、彼の想像以上にクロウの実力は半端じゃなかった。
全てのラウンドでクロウの一人勝ち。誰も彼女を止めることができなかった。
「もう一回!」
悔しさが込み上げた恭弥は再プレイを提案する。クロウは悩むことなく「良いよ」と承った。しかし、何度プレイしてもクロウには勝てない。現実世界における熊のように遭遇したら確実にやられる。
「クソッ!」
十回ほどのプレイを終え、完膚なきまでに叩きのめされた恭弥は思わず机を叩く。席を立ち上がり、受付の方へと歩いていった。
「帰っちゃうの?」
「ちげーよ。ドリンクを注いでくるだけだ」
クロウに一言置いて受付横にあるドリンクコーナーで炭酸を注ぐ。
綾人は門限のため一足先に帰ってしまった。恭弥は母親に連絡し、夜遅くなることを告げてカフェに残る。このまま負けて終われるわけがなかった。
ドリンクを飲み終えると自分の席へと戻っていった。クロウは恭弥が休んでいる間もゲームに没頭する。チャットで繋がって猛者たちの集まる専用の部屋でプレイしていた。
恭弥は椅子に腰掛けながらクロウのプレイする様子を覗く。全てのラウンドでクロウに負けたとは言え、恭弥も残り二、三人になるまでは戦うことができていた。
だから一度冷静になって遠くからクロウのプレイ姿を見ることはなかった。
状況ごとにおけるマウスやキーボードの操作方法。彼女がどこを見てプレイしているのかを恭弥は見学する。
全てのラウンドを終え、クロウはヘッドホンを置いた。
「どうする? やる?」
「ああ。このままじゃ終われない」
恭弥は改めてヘッドホンをつける。クロウは恭弥の様子を見て、笑みを浮かべるとヘッドホンを付け直す。休憩を終えた最初のラウンド。恭弥は先ほどのクロウの手捌きを脳裏に浮かべながら操作する。
「こういう感じか」
誰にも聞こえない声でボソッと呟く。程なくしてクロウのキャラと対峙した。
今までは対峙してから数秒ほどで撃沈された。だが、今回は互いに引けを取らず、撃ち合いになる。最終的には他のプレイヤーがやってきたためクロウが撤退した。
結果、クロウと恭弥の二人が残る形で時間切れとなった。
続く第二ラウンドはクロウのひとり勝ち。最終ラウンドは再びクロウと恭弥が生き残って終わった。
「畜生っ! 勝てねー!」
第一ラウンドで調子に乗ったのが仇となった。もっと慎重に行けば良かったと恭弥は後悔する。
「君、面白いね」
対してクロウは彼を二度も倒せなかったことに悔いる様子はなく微笑んでいた。その余裕さが恭弥の気に障った。だが、次の言葉に彼は驚愕する。
「ねえねえ、私と一緒にチーム組まない?」
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