第六話「三兄弟のとおせんぼ」

「さぁ、早く問題出してよ!」

 セサミはジリジリと男の子に詰め寄った。

「なっ、なんだよこいつ」

 動揺するのも無理はない。ここは飼い主として謝っておこう。

「ごめん、うちのセサミが」

 男の子は気を取り直した様子で口を開いた。

「まぁいいや。いくぞ第一問!はくことができてもぬぐことはできないものなーんだっ!」

「はくことはできても?」

「ぬぐことはできない?」

 オルフとセサミがそう言いながら首を傾げる。ここはあたしが答えましょうか。

「ホウキね」

「せっ、正解!」

「おぉっ!」

「すごいです」

 結構簡単な問題なのにここまで感心されるなんて。二人の反応にあたしは内心苦笑した。

「兄さん、ここはぼくが」

「なんかもう一人来た!」

 セサミが叫んだ通り、現れたのは最初の子にそっくりな男の子だった。違うところがあるとすればアホ毛があることとスカーフ帯が黄色であることくらいだ。こんなにもよく似ているということは双子かしら。最初の子が期待を込めるような表情で言う。

「よし頼んだぞ、フィドリ」

 どうやらフィドリという名前らしい。彼は頷くと、あたし達の方を向いた。

「それじゃあ第二問。七本のろうそくに火をつけたけど風で二本が消えました。次の日まで残っていたろうそくは何本?」

 これも簡単ね。

「火がついていたろうそくは溶けてなくなるから二本!」

 けれども、答えを告げるのはセサミの方が早かった。あら、やるじゃない。

 それを聞いた途端、フィドリはつまらなそうな顔になった。きっとすぐに答えを言われてしまったからだろう。

「ふん、正解だよ」

「これで通してもらえる?」

「いえ、確かもう一人――」

 あたしの質問にオルフが何かを言いかけた。けれども続きを聞く前に最初の子がそれを遮ってしまった。

「いーや、まだだね。来い、プラクル」

「はーい、ファイラ兄さん」

 なんと三人目が現れた。プラクルという子はアホ毛が双葉のようになっていて、スカーフ帯が青色だった。その二箇所以外は以外は他の子達とよく似ている。三つ子だったのね。

「とっておきの問題、出してやりなよ」

「うん!」

 プラクルはフィドリの言葉に大きく頷いた。

「いくよ、第三問!これはすっごーくややこしいけど答えは一つだよ。レモンが五つ、ミカンが七つ、オレンジが四つあります。さてグレープフルーツはいくつあるでしょう?」

「グレープフルーツなんて出てきてないじゃないかぁ!」

 真っ先にセサミが非難する。確かにそうなんだけど、あたし達が怒る筋合いは無いのよね。

「全部かんきつ類なのは何か意味が?」

 この発言はオルフ。残念だけど意味は無いわ。

 答えは既に問題の中に出ている。あたしは堂々と答えを告げた。

「ひっかけね。答えは一つよ」

「も、もうわかっちゃったの!?」

 プラクルが動揺した様子で叫ぶ。

「一つ?どうして――あぁっ!」

「ど、どうしたんですか?」

 セサミも気づいたようだ。唯一わかっていないオルフのために解説しておきましょう。

「一応解説するわね。彼は問題に入る前に『答えは一つ』って言ってたでしょ?つまりそれが問題の答えだったわけ」

「そういうことだったんですね!」

 オルフも理解出来たようだ。

「なぞなぞは解いた!さぁ通してもらうよ!」

 セサミが得意げな顔で三人に向かって叫ぶ。その内二問はあたしが解いたんだけどね。

「わっ、わかったよ。さっさと通れ」

「次会った時は負けないよ」

「またね〜」

 ファイラとフィドリはどこか悔しそうな顔で、プラクルは笑顔でそう言った。

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