謎解きの国のアリス

チェンカ☆1159

プロローグ

「おい主!起きろ!」

 誰かが叫んでいる。まだ眠い。もう少しだけこのままでいさせてくれないだろうか。

「んー、あと五分……」

「五分も待ってたらこの回終わるぞ!」

「もう何……」

 なんだかよくわからないことを言われた。とりあえず起きればいいんでしょ、起きれば。

 投げやりな気持ちになりながら目を開ける。視界に入ってきたのは一つの顔だった。黒い髪を一つに束ねた、小学生くらいの男の子。

 思わず呟く。

「誰?」

「飼い猫を忘れたか」

 どうして突然そんなことを聞くのだろう。忘れるわけないじゃない。大事な飼い猫、ゴマのこと。

「いやゴマのことは覚えてる――」

 そこまで言って気づいた。目の前にいる男の子の顔立ちはゴマに近いものを感じる。もしゴマが人間になったらちょうどこの子みたいになる。そんな確信を持つ程に面影がある。と、いうことはもしかしてこの子は本当に――

「ゴマなの!?」

「やっと気づいたか主」

 どうやら本当にゴマだったらしい。これはきっと夢の中だ。もう一度寝よう。

「主?」

 呼ばれているが聞こえないふりをする。

「起きろーっ!」

 ほんの少しだけ眠りに入ったあたしは再びゴマに起こされてしまった。

「あれ?夢じゃないの?もう一度寝たら元に戻ると思ったのに」

 一応確認する。

「夢なわけがあるもんか」

 ゴマは呆れているようだった。でも、こんな状況、夢じゃなきゃありえない。

 それを指摘しようと口を開く。

「そんなゴマが――」

「ボクのことはセサミと呼べ」

 なぜか訂正が入った。セサミって確かごまを意味する英語だったような。なんでわざわざ英語に。そう思ったけれど口に出すのは控えた。もっと大事なことがある。

「セサミが人間の姿になるなんて、夢じゃなきゃおかしいでしょ」

 ゴマもといセサミは胸を張り、得意げな顔をした。

「この世界ではこの姿なのさ!」

「そ、そうなんだ」

 反応に困ったあたしはありきたりな言葉をひねり出す。つまりここはあたし達が住むのとは別の世界、要するに異世界ということだろう。セサミならこの場所について何か知っているだろうか。

「ところでここどこ?」

「ここはね――」

「ミステリーワンダーランドへようこそ!」

 セサミの言葉を遮って、あたし達に歓迎の言葉を述べてきたのは女の子だった。半透明の羽が生えた小さな女の子。いわゆる妖精だ。

「「誰?」」

 あたしとセサミの声が重なる。どうやら彼もこの子のことを知らないようだった。

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