第4話-3 Go to hell.

そのショッピングモールから出たのは何人だったろうか。入った数よりも少ないのは明白だった。だが、誰も覚えていないのだ。

誰がいたのか。何があったのか。誰がいなくなったのか。

扉は彼らの全てを奪っていった。

扉を潜れば彼らは忘れるだろう。それは彼らにとって良いことなのだろうか。それとも、悪いことなのだろうか。


扉の中に残された人は何を思うだろう。忘れ去られた悪夢のような世界の中で、彼らは逃げ惑い続けるのだ。

たった一つ、選択を誤っただけなのに。


ああ、また誰かがいなくなったようだ。


始めから存在さえしていなかったとでもいうように、その扉は消えていった。

異質な部屋達を抱えたまま、それは世界の何処かを漂い続けるのである。




その招待状は予言である。予めこうなるのだと宣言している。だから、避けることもできたはずなのだ。

しかしゲストとなった彼らはやって来た。何かが起こるという期待もあったのだろう。それでも彼らは招待状を消えていった。

異質な部屋達を抱えたまま、それは世界の何処かを漂い続けるのである。


その招待状は予言である。予めこうなるのだと宣言している。だから、避けることもできたはずなのだ。

しかしゲストとなった彼らはやって来た。何かが起こるという期待もあったのだろう。それでも彼らは招待状を手にしたのだ。

その瞬間、予言は確定した未来となった。彼らは何かが起こる場へと自分から飛び込んでいったのである。


それもまた、予言されたことであろう。







扉は開いた。大きく口を開け、ゲストを呑み込んでいった。

そして静かに、口を閉じていった。




あのショッピングモールはあんなに大きくなかったはずだ。

あのショッピングモールには空き店舗などない。

あのショッピングモールにはそんな通路はない。

何かがおかしい。

何かがおかしい。

何かがおかしいはずなのにおかしいと感じない。


どこからないはずのものがあるように姿を変えたのだろう。


誰も覚えてはいない。




どうせこの世界はくだらないものなのだ。だからそこから誰かがいなくなってもいいだろう。何かおかしなものが増えてもいいだろう。

どうせ誰も見ていない。誰も気にしない。その変化に、誰も気づかないのだ。なんてくだらない世界だろう。




ああ、また誰かがいなくなったようだ。

世界から、誰かが消えたようだ。




今度はあなたの番だ。

今、これを見ているあなたの番だ。

だって、見ていたのだろう?

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