第10話 「課金=バカ」「無課金=えらい」ではない。

 『推し活』の中でも「お金を使う人ってバカだよねー」という人がいる。

 また「私は無課金です!」誇る人がいる。

 ただ、自分はこの姿勢が良いとは思わない。


 もし、これを読んでる人が何かの創作者で、あなたの本が出たり、CDが出たり、作品集が出たとしよう。

「初のこの人の作品! 欲しいし、応援のためにも買おう!」とお金を払って買ってくれた人に「あの人、課金してバカみたい」言う人がいたらどう思うだろか?

 

 お金はその価値を感じているから払うのだ。

 それを他人がバカだの、無課金で見る人のほうが賢いだの言うのは、自分はおかしいと思う。


 何かするには、なんでもお金がかかる。

 本を作るのも音楽を作るのもそうであるし、即売会だろうとライブだろうとスペース代や箱代が掛かる。

 それはこのようなネット小説のサイトであったり、配信アプリであったりでも、サーバ代であったり、デザイン代であったり、管理費であったりがいろいろとかかっている。

 

 配信の話で言うならば、配信する人はそれなりにマイクやパソコンやゲームの準備をしたり、アバターの製作費であったり、イベントを走るために企画をするならその企画にかかってるお金などもあるはずである。


 それらの準備をして楽しませてくれるお礼を込めて、お金を使ってギフトを投げてる人を「無課金の私と違って、配信者やここの運営にお金を払っている人ってバカみたい」というのに、自分は同意しない。

 

 メタバースやオンラインゲームでもそうだが、アバターの服や部屋機能をショップで買ったり、ガチャを引く人を「頭が悪い」みたいにいう人がいるが、そういった物を作るにも、お金がかかっているのだ。


 未熟な年齢の頃なら、そういう「何を作るにも誰かが働いている」という感覚がわからないかもしれない。

 自分が休みの日でも、電気ガス水道・電車バスを動かすために働いている人がいる、自分が行く店の人たちも休日出勤してて大変というのがわからないのと似た感覚かもしれない。


 また、企業や運営、プロの作家などを強大なものと考えて「それにお金を払わないオレは、権力に屈してないカッコイイ存在と勘違い」もないとも言えない。


 しかし、毎月のようにサービス終了の話がSNSに流れるように、それらのアプリもサイトも長生きする存在ではなく、吹けば飛ぶ存在も多いのだ。

 今は見切りも早いから、始まって数ヶ月もしないうちに畳む準備をしている。

 

 無料券や配布が来るまでずっと待っている人しかいなかったら、そのコンテンツは収益見込み無しとして切られてしまい、死んでしまう。

 また、デザインする人やコンテンツを作る人は「こんなものに課金するなんて」という声に心を痛める事だろう。


 仕事面の話をしたが、趣味でもそうである。

 同人誌でも作るのに印刷費・道具費・資料代・作者の時間などが掛かっている。


 それを「無課金=えらい」と思い込み、「本当にたくさんの人に見て欲しいなら、売ったりせずに、ネットで無料公開したらどうですか?」と作者に言って(私ってば賢い!)するのはどうなのかと自分は思っている。


 配信などでもそうである。

「雑談してるだけなのに、お金使ってギフト払うなんて、もったいないことしてる」いう人がいるが、元々ライブチャットなどでは、10分100円でお話するとかあるのだ。


 若い女性やセクシーなものでなく、レンタルおじさんだって、1時間1000円くらいするのだ。

 雑談をしている配信主にお金を払っても少しもおかしくない。


 ギフトについたコメントのみを拾えば良くて、それ以外のコメントは拾わなくていいと配信も多い。配信サイトの説明に「あなたが他のバイトをしてればお金が入る時間を配信に使ってるのに、無料で返事をしてあげる必要なんてない」と書かれていて、それも一理あるなと思った。


 お金を払うのは、ある程度の尊敬でもあると思う。


 絵描きさんに「ちょちょっとアイコンを描いてよ」とか、歌い手さんに「配信上がって、軽くちょっと歌ってよ」と雑に無料でやってもらおうとするのは、関係の近さや日頃の付き合いによるかもしれないが、あまり尊敬のない行為と言える。


 絵描きさんが自ら「ファンアート描きました!」するのは自由だけれど、やってもらう側が「ちょっと軽くやってよ」という態度なら、友達でも付き合いは考えたほうがいい。

 

 もちろん推し活は、なんでもお金でもない。

 だから微課金で応援するのもいいと思う。

 生活が壊れるほど課金しないほうが安全ではある。

 課金し過ぎちゃうのが怖いという精神もわかる。

 「推しを一番応援してるのは自分」と見せつけたい承認欲求のために預金を崩したり、再現なくガチャをやってしまうのを止める気持ちは筆者もある。 


 だが、「お金を払う=バカのやること、無課金=賢い」がまかり通れば、コンテンツはみんな死んでしまう。


 ネットの時代になって、また、ゲームも先にお金を払って買う形ではなくなり、無課金で始められて当然、無料で見られて当然という感じになっているが、その中でも「私はこれに価値を感じているからお金を払いたい」という人に「課金するなんて、推しとかいうものにお金なんて出して、あの人はバカだね」というような風潮は、正直なくなって欲しいと思っている。

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