第4話 百合 女同士で交わるということ
男女のエッチは男が女の中に精子を出したら終わりだ。じゃあ女の子同士のエッチはどこまでいったら終わりなんだろう。
藤田とキスをした。私よりも唇が厚くて暖かい。何故か涙が出そうになった。私はこの瞬間をずっと夢に見ていた。お腹の下が、いや子宮がきゅんきゅんしている。でもこの子宮が求めているものを藤田からは生み出せない。じゃあこの子宮は何のために疼いているんだろう。
キスをしたことで息が苦しいからか、興奮しているからか、私の声が少しずつ漏れてきた。
「う……ん…」
「大丈夫だよ冬梅。怖くない。」
藤田が私の口の中に舌を入れて甘く絡めた。なんて優しいキスなんだろう。頭がトロけそうになった。
「女の子同士ってどこまでいったら終わりなの?」
「私と冬梅が一緒に終わりたいと思ったらでいいんだよ」と言ってキスを再開して、交わった。
藤田は私の中に指を入れた。そして指の腹で私の中を優しく刺激した。私は思わず腰を上げて声を上げた。
「冬梅知ってる?女の子の指でやるとね中は必ずイケるんだよ。女の子が1番感じるところって、指をちょうど全部入れた時の指の腹側。そこを優しく刺激するの。」
確かに男がやるものとは全く違った。気持ちいいところを的確に的確に押していく。お陰で声が断続的に上がる。
そして私は疲れ果てて意識を失い、目が覚めたら藤田に抱きしめられて眠っていた。
「ごめん藤田。寝ちゃってた」
「いいよ。最初はそんなもんだ」
なんか気まずい。そりゃそうか。
さっきまで散々藤田に弄ばれてしまったのだから。
だけど、こういう気まずい間ができた時、話題を振るのはいつも藤田だ。
「冬梅はさ、いつから私のこと好きだったの?」
「え?そ、それは教えない」
「えーなんでさ?」
出会った時から好きだなんて重たすぎる。引かれたくない。
「じゃあ、何で好きになったの?」
「私を対等な友達と思って接してくれているとこ」
「はーなにそれ?笑」
高校2年生の時。私は孤立していた。学校は休みがちで友達はいない。休み時間はひたすら机に突っ伏して寝たふりをしていた。髪もボサボサで肌は蒼白い。私は気持ち悪い人だったのだ。別にいじめられていた訳ではない。
ただペアワークの時やグループワークの時に「うわ、コイツとなっちゃったよ。」という空気は必ず出された。私はクラスの人たちと関わらない分には何も言われないが、いざ関わることになると激しく嫌悪された。
そして英語の授業のペアワークで私の心は完全に折れた。私はとある男子とペアになった。その男子は私の顔を一瞬見て苦笑いをし「最悪」と呟いた。それだけなら良かった。そんな男子に対して、学級委員の可愛い女の子が「可哀想にドンマイ」って優しく声をかけていた。彼女に悪気は一切無い。ただ、あの時の私は涙を堪えるのに精一杯だった。私の中で何かが音を立てて崩れた。その一件から私は教室に入れず、保健室登校となった。
同じ年に産まれた男女の集団で、自分だけ対等に扱われないことは、とても苦しいことだ。
私は“対等”な関係を欲した。下に見られず、雑に扱わない。皆にとっては当たり前だけど、私にとっては夢のようなものだった。
そんな対等な関係を築いてくれたのが藤田だった。
藤田は1軍のグループに居た。顔が可愛くてドジ、誰にでも気怠けそうに話すギャルだった。先生からも1軍女子からも可愛がられていた。
私はその英語のペアワーク以来、2年生の間は期末テスト以外、教室に入れなくなった。期末テストだけは成績の関係上、教室で受けなければ行けなかったので仕方なく教室で受けた。
そして、私は藤田と初めて言葉を交わした。期末テストの時だけ座席が出席番号になる。フジタとフユウメで出席番号が前後で私の前の席が藤田だったのだ。
そして私は初めて対等に扱われた。「テストはどれくらい勉強したのか?」「今日の朝ごはんは何を食べたのか」「最寄駅はどこなのか」普通の友達の会話をした。
夢を見ている気分だった。私と話していても嫌な顔ひとつしない。笑って私と会話をしてくれる。なんて尊いことなんだろう。
それから藤田と連絡先を交換した。だけど頻繁に連絡は取り合わなかった。私が教室に来ないことを深く言及せず、保健室で会ったら軽く話す。期末テストの帰りは一緒に帰って、カラオケに寄った。ある日私の蒼白い肌を心配して、ピンクの色付き日焼け止めをプレゼントしてくれた。「これなら日焼け止めだから校則違反ではないっしょ」と笑っていた。(化粧品は校則違反だった)。私はそのお礼に藤田に勉強を教えた。藤田は物覚えがよく、私が教えた所が期末テストに出て正解した時は大はしゃぎしていて可愛かった。
藤田にとっては何人もいる友達の一人だけど、私にとってはただ1人の友達で大好きな人なんだ。
だから藤田が風俗しててもパパ活してても何も咎めない。アメリカで身体を売ると言うんだったら応援する。
私に初めて対等を教えてくれた、たった1人の友達でたまらなく大好きな人。
昔を思い出すと、より藤田のことが愛おしくなる。私は藤田にキスをした。藤田は笑って私のキスに応えてくれた。
「さっきは散々1人で気持ち良くなってたけど、それは対等なのかな?冬梅ちゃん」藤田はニヤリと笑った。
「次は私が気持ち良くさせるから、これで対等ね。」
そして私達は再び交わった。男とするセックスは冷たいという表現が近い。だけど女とするセックスは、藤田とするセックスは心も体も暖かくなる。
お互いが傷つかないように。お互いを思ってする。射精という身体の生理現象が終わりの合図じゃない。私たちは私たちの中で終わりを見つける。これが対等なんだ。なんでエッチは男女でするものだと考える人が多いのだろう。
私は疲れ果ててぐっすり眠った。いつ眠りに落ちたかも覚えていない。
そして目が醒めた時、私の目の前から藤田は消えていた。
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