第2話 テンプレ審判

まさかの俺が死んで、テンプレ展開に心踊らせる事になるとは。

ブラック企業様様、過労死万歳だ。


並んでいるのは5人か…… 。

其れにしても気が弱そうで、優しい顔な人ばかりだな。


天国行きか地獄行きの審判が、下されるとでも思っているのか。


誰も口を開かず、皆不安そうにオドオドしている。


何も心配する事は無いのに……。

どう考えても、チート貰って異世界飛ばされるテンプレだろコレッ。


俺なんか、この先の展開を想像しただけで笑顔が止まんねぇぞ。


貰えるのはどんなチートだろうか?


全属性魔法とか、時空間魔法でも良いな。


「なに!?何故そんな高次元の魔法を複数放つ事が出来るんだ!!」


うん間違いなくモテるな、完璧だ。


他には不死のスキルとか、敵の能力を奪うとか…… 。


「そんな馬鹿な!!我より強い人間なぞ存在するはずが無い!!」


これは世界救ったな、もう敵にも感謝したくなるよ。


どうせなら、ハーレム系の要素も追加して欲しいな。


王国の姫様救うのは当然で、ケモミミやエルフを助けるのも良い。


そもそも現代の倫理観なんて、異世界には関係無いし。


現実では有り得ない、俺を取り合うような展開。

きっと泣くな。


イヤ、俺には七海という推しが…… 。


グヌヌ…… 。




ちょっと待てよ、若干テンプレと違う事ないか…… 。


普通は子供とか動物を助けようとして、トラックに轢かれるんだろ。


なんか不安になってきたな、前の人に聞いてみよう。


「えっ?死に方ですか。川で溺れていた子供を助けたんですが、自分は流されてしまいまして…… 」


「……そうでしたか、教えて頂きありがとうございます」


不安そうな顔してるんじゃねー、紛らわしい。

おめでとうございます、心配しなくても貴方はチート確定です。

そんな事を考えながら、丁寧にお礼をした俺は静かに天を仰ぐ。


マズイな……。

普通に過労死な俺は、チートじゃないかもしれない。


下手したら、望んでもいない現実に帰されるパターンも有り得るぞ。


グヌヌ…… 。

何か手を打たなければ。


並んでいるのは後二人、俺の順番は近付いて来ている。


創作の事ばかり考えていた脳をフル回転させ、俺が思い付いた秘策は落語だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る