ハッピーライフ

南条足時

ハッピーライフ(1)

旬28歳、今日もSNSにログイン。

旬はサラリーマンだが大学卒業以来女友達(リア友)がいない。会社には仲の良い女性社員もいるが恋愛には発展していない。SNSには今日も瑠美からメッセージが届く。


「今日の夕食は何ですか?」


瑠美からのメッセージはいつもよく似た内容で退屈していた。それでも異性からメッセージや着信を貰うと嬉しいと感じていた。瑠美は21歳の社会人で、大学には行っていない。コンビニでアルバイトをしている。私は時々瑠美からお小遣いを要求されるが、体を許してもらったことは無い。瑠美は小柄で黒髪が似合う女性だ。しかし、SNS上でしか会ったことがなく、金銭はPayPay払いで要求される。そのようなアプリを持っていなかった私は給料を貯めてPayPayに入会し、時々50000円を送金した。私は瑠美から愛されているように感じたことは無く、いつも絶望していた。


2024年4月

旬は東京に転居した。

今度はサラリーマンではなく公務員だ。

旬は既に入会していたマッチングアプリで東京在住の女性を探していた。

「ジューンブライド」は男性無料で利用できるマッチングアプリだ。

小牧蘭は42歳の女性で茶髪のショートヘアが似合う。

旬は気が付いたら彼女と毎晩連絡を取っていた。


「今日もお疲れ様です。お仕事は無事終わりましたか?」


  「無事でした。蘭さんもお疲れ様です。」


蘭は子供が二人いるシングルマザーだ。長男と次女がいて、長男は障害を持っているらしい。障害を持った長男は電車好きで、母親の蘭は電車に乗る機会が増えた。

一方の次女は3歳になったばかりで、プリキュアショーを見るのが好きだ。

そのためデートは遊園地が多かった。所沢の西武遊園地や多摩動物園に行くことが多かった。


とある休日

朝11時に武蔵境駅に集まった。そこから京王線に乗り換え多摩動物園に向かった。今日は蘭が黒髪で登場した。白髪を染めたらしい。蘭のトレードマークであるショートボブの髪型はそのままだ。次女の凛もおかっぱに切っていた。長男の拓はカメラをプレゼントしてもらったらしく、京王線をデジカメで撮影していた。拓の障害は軽い知的障害と発達障害だ。元旦那は拓を虐待したらしく、蘭は結婚3年目で離婚し、それ以降独身だ。蘭は美容を気遣っていて、メイクを濃くしなくても瞳が大きく美人である。42歳になるが、とても若く見える。一方の旬は28歳だが頭髪が薄くなり始めていて悩みが絶えない。公務員になった旬は少し給料が増えたのだが。


動物園に着いた4人は入場料を支払った。すべて旬の給料だ。年の差恋愛だがエスコートするのは旬の方で、いわゆるママ活とは異なる。入場券にはコアラが描かれていた。

動物園の入口には大きなゾウがいた。旬はカメラで子供たちや蘭を盛んに切り取った。13時からプリキュアショーがあるらしく、旬は整理券を貰いに行った。整理券の列には旬と同世代ぐらいのパパさんが多く並んでいた。ショーが始まるまではハンバーガーを食べたりメリーゴーランドに乗ったりして時間を過ごした。肝心の動物はライオンとアルパカを見た程度だ。それでも4人は楽しい時間を過ごした。長男の拓はハンバーガーが好きで、特にチキンバーガーが好きだ。今年小学校に行き始めた拓は学校にもようやく慣れ始めたそうだ。特別支援学級では字の書き方を中心に学習しているが、いたって優秀のようだ。


(to be continued)

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