第13話 真の黒幕は

「死刑に処す」と言われたけど、執行は何時かとか解らんから不安だなぁ。

この国では執行前日に(明日殺る)とか言われるらしいんだが・・・


そんなある日、アンドリュー皇太子が部屋に来たんだわ。なんか興奮してんなぁ。

「喜んでください!」

「どしたの?」

「死刑執行は取りやめになりました、そして軟禁も解除されましたよ」

「なんでまた急に?」

なんでも国王が、あのオリヴァーと話をしてたんだって、

あたしの死刑執行を、理由もなく死刑にするわけにはいかないと国王が言ったとか。

オリヴァーは国家侮辱罪とかで死刑とか言ったけど、国王に聞かれてシドロモドロで

あやふやな答えしかできなかったみたいね。


「じゃあ外出可能ってことね」

「そうです、外出するのであれば、その衣装ではバレますね」

「ならエマさん、あなたの衣装貸してよ」

「いいですよ体形同じようですし、なら私も一緒に」

アンドリュー皇太子が「じゃあ私が護衛に」だってさ、まぁ何かあったら困るし。


「ここか?あの占い師がいるのは」

「そのようですね、ちょっと私見てきましょう」エマさんが行く。

ロレーヌちゃんは顔バレしてるしな、アンドリュー皇太子では難しそうだし・・・


「いますね」

建物の中には、部屋ごとに占い師がいるらしく「リン・ジャネットの部屋」があるな

【在室中】ってなってる。議員会館にも有ったし外務副大臣の部屋にも有ったなぁ。

「じゃあ私たちは向かいのカフェで待ってます」アンドリューとロレーヌ。


コンコン


「どうぞ」エマと一緒に部屋に入る。

水晶玉が乗った机、いろいろな占いが書かれたシートが壁に貼ってある部屋には、

小柄な少女のような女性がフードをかぶって座っている。素顔は見えない。

「おかけください」

「きょうはどのような用件ですか」

「私の将来を占ってほしいのです」エマが言うと

カードやらなにやら、いろいろ使って占いをしているようだが・・・


「あのさぁ、あんたオリヴァーとどういう関係なの?」じれったいから聞いたわ。

「オリヴァーとは?」冷静な声で答える占い師。

「オリヴァー王太子の事よ、知らない訳無いよね?調べはついてんのよ」

「単なる知り合いだ」

おっ、そう来たか。

「月に一回会いに来てるんだろ?」

「そうだが」

「なにしに来てんのさ」

「それを聞く権利がキミにあるのか」

「有ります、オリヴァー王太子の所為で私は死刑宣告を受けたわけだし、

 そもそも、王太子が処刑された事件、あんたも知ってるよね?それだって

 オリヴァーの関与が疑われているんよねぇ」

「あの事件は残念だった。慈悲深い王太子だったなぁ」

「なんか、あんた隠してるよね?」

エマの占いが終ると。「今日の仕事は終わりだ、帰ってくれ!」


「エマ?占いはどうだった?」

「なかなか当たってますね、私の今までの事とかね、

 将来は信用できると感じた女性についていきなさいって」


アンドリューとロレーヌに話すと、「なにか怪しいですね」「隠し事してるような」

オリヴァーにどういう話をしているか、どう接しているか?このあたりを知りたい。


ある日

ローリングスの部下が、ある情報を持ってきた。

それによれば、リン・ジャネットという占い師の父親っていう人物は

隣国との戦争に駆り出されて、あっさり戦死したらしく、リンは王家を恨むように

なったんだそうだ。悲しみに暮れるあるとき、戦死者追悼式典でオリヴァーに

どういう理由か声をかけられて、それから宮殿へ出入りするようになったらしい。

オリヴァーがまだ今のようなブサメンになる前な。まだイケメンだったころな。

「じゃあ、そこでオリヴァーにいろいろなことを吹き込んだってことか?」

「そうかも知れません」それだけで?王太子を処刑させるようなネタなの?


「おそらくオリヴァーはあの占い師に好意を持ったのかもしれませんね」

「逆のパターンも有り得る」セバスチャンが言うのだが。


そのうち

アンドリューも自分の付き人を使って何やら調べていたらしいのだが。

好意を持っていたのは、どうやらオリヴァーの方らしい、

それが証拠に占い師には男がいるんだそうだと。

占い師は素知らぬ顔でオリヴァーの部屋を訪ねていた、

そこであることないこと吹き込んだようだ、とんでもない奴だな、占い師は。


「真の黒幕はあの占い師って感じがするんだけど、どう思うよ?」

「ですね、私たちも同じです」皇太子兄弟はそう思っているみたい。


父親の戦死っていう喪失感から、王家の者に取り入って、

恨みから不満を吹き込んだって言うことでしょうかね。

ただ王太子の処刑って言うところまで行くとは思ってもみなかった、誤算だった。

そういうことですかね。


第13話 完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る